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last Eden  作者: 久遠夏目
2008年
6/73

青い夏はすぐそこに

 あーあ、やる気が起きない。

 ――なんてイマサラ、


「イマサラ五月病?」


 ぐるん、と振り返って、質問を投げかけてきた相手をにらみつける、気力もない。ぼくは自分が思っていたのと同じことを声に出した彼を見て、ただふにゃりと笑うだけ。


「あはは、アッタリー」

「うわあ、やる気ゼロだね」

「イマサラ五月病だからね」

「つなげて言われると、何だか新種の病名みたいだね」


 独り言のようにつぶやいて、くすりと笑う彼。ぼくも笑おうとしたけれど、いかんせん「イマサラ五月病」なわけで、やっぱり力の抜けた笑顔にしかならなかった。本当に、どうしてイマサラ五月病なんかになってしまったんだろうか。うん、考えるのも面倒だ。


「ちょっと君、本当に覇気が感じられないよ」

「まあイマサラ五月病だからね」

「これで二回目だよ、そのセリフ」

「あはは、そーだっけ?」


 ぼくからは、もう乾いた笑いしか出てこなかった。

 何で、どうして。そんなの、考えることすら面倒だ。

 そして、生きていることさえも、


「――ああ、」

「何?」

「うん、イマサラ五月病の原因がわかったみたい」


 そう、原因はきっと、


「世界に嫌気がさしたからだろう?」


 ぼくよりも先に言葉を発したのは、彼だった。またしても思考を言い当てられ、しかしぼくは、さっきよりもしっかりとした笑みを浮かべた。


「うん、半分アタリ」

「半分? じゃあ、もう半分は?」

「生きてることさえも嫌になったから、かな」


 ぼくがそう答えると、彼は一瞬顔をしかめたが、すぐに口角を上げて皮肉を口にした。


「それはいつものことなんじゃないの?」

「かもね。そういう君こそ、」

「ああ、世界なんて大っ嫌いだよ」


 イマサラ五月病のせいか、今日は彼にセリフを奪われてばかりだ。まあそんなこと、どうでもいいか。何もかもが面倒くさくてしょうがない。

 ああ、もうすぐ青く透きとおった夏が来る。そのときには、イマサラ五月病が治っているといい。




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