青い夏はすぐそこに
あーあ、やる気が起きない。
――なんてイマサラ、
「イマサラ五月病?」
ぐるん、と振り返って、質問を投げかけてきた相手をにらみつける、気力もない。ぼくは自分が思っていたのと同じことを声に出した彼を見て、ただふにゃりと笑うだけ。
「あはは、アッタリー」
「うわあ、やる気ゼロだね」
「イマサラ五月病だからね」
「つなげて言われると、何だか新種の病名みたいだね」
独り言のようにつぶやいて、くすりと笑う彼。ぼくも笑おうとしたけれど、いかんせん「イマサラ五月病」なわけで、やっぱり力の抜けた笑顔にしかならなかった。本当に、どうしてイマサラ五月病なんかになってしまったんだろうか。うん、考えるのも面倒だ。
「ちょっと君、本当に覇気が感じられないよ」
「まあイマサラ五月病だからね」
「これで二回目だよ、そのセリフ」
「あはは、そーだっけ?」
ぼくからは、もう乾いた笑いしか出てこなかった。
何で、どうして。そんなの、考えることすら面倒だ。
そして、生きていることさえも、
「――ああ、」
「何?」
「うん、イマサラ五月病の原因がわかったみたい」
そう、原因はきっと、
「世界に嫌気がさしたからだろう?」
ぼくよりも先に言葉を発したのは、彼だった。またしても思考を言い当てられ、しかしぼくは、さっきよりもしっかりとした笑みを浮かべた。
「うん、半分アタリ」
「半分? じゃあ、もう半分は?」
「生きてることさえも嫌になったから、かな」
ぼくがそう答えると、彼は一瞬顔をしかめたが、すぐに口角を上げて皮肉を口にした。
「それはいつものことなんじゃないの?」
「かもね。そういう君こそ、」
「ああ、世界なんて大っ嫌いだよ」
イマサラ五月病のせいか、今日は彼にセリフを奪われてばかりだ。まあそんなこと、どうでもいいか。何もかもが面倒くさくてしょうがない。
ああ、もうすぐ青く透きとおった夏が来る。そのときには、イマサラ五月病が治っているといい。