神様と存在証明
「神様って、何?」
「え?」
ぽつり、独り言のようにつぶやいた彼女に顔を向ける。
「神様ってホントにいるの?」
「君は、いると思う?」
「わからないから聞いてるんだよ」
そりゃそうだ。真顔を崩さず、至極当然の答えを口にした彼女に、ぼくは苦笑した。
「そうだなあ、神様ってさ、結構何でもいいと思うんだよね。そんなに大それたものじゃないっていうかさ」
「どういう意味?」
そう尋ねてきた彼女は、やっぱり真顔だった。彼女には感情がないのだろうか、と安易なことを考えてみる。
「たとえば、君が絶体絶命になったところをぼくが助けたとするでしょ? そしたら君にとっての『神様』ってぼくじゃない?」
「それは『命の恩人』って言うのが正しいと思うけれど」
「細かいなあ、君は。じゃあ、たとえば君の友人が、君の誕生日に君のすきなものをプレゼントしてくれたとする。そしたらその友人を『神様だ!』って思わない?」
「その友人が事前にわたしのほしいものを知っていたという可能性もなくはないよね」
「ぐぬぬ。じゃあ、君のすきな漫画が、君の望んでいたような展開になる。そしたらその漫画家さんを『神様だ!』って思わない?」
「いや、最初からそういう展開になる予定だったのかもしれない」
やはり真顔でいる彼女に次々と論破され、ぼくはちょっと哀しくなってきた。
「えー……もう何なの、君。全否定? 全力で否定? ぼく、結構頑張ったと思ったんだけどなあ」
「そうだね、あなたは頑張った。だけど、わたしにはわからなかった。神の存在証明は難しいね、――神様」
そう言って、ずっと真顔だった彼女はにっ、と笑った。
「ああ、身をもって知ったよ」
彼女は天使、ぼくは神様。
けれど、それを証明する手だては、今のところない。




