表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
last Eden  作者: 久遠夏目
2009年
33/73

確実なものは何もない

「この世で確かなものって、何だと思う?」


 彼女はそうつぶやいた。それは独り言か、それとも。


「ねえ、シカト?」

「ああ、ぼくに言ってたの?」

「当たり前じゃない」

「いや、てっきり独り言かと思ってね」

「失礼ね」


 ここにはあなたとわたしの二人しかいないじゃない、と彼女はほおをふくらませた。


「で、もう一度聞くけれど、この世で確かなものって何だと思う?」

「さあ? そもそも、この世に確かなものなんてあるのかな?」

「まずそこからになっちゃうのね、あなたは」


 ぼくの答えに苦笑をこぼし、やれやれ、と肩をすくめる彼女。ひねくれている、とでも言いたいのだろうが、彼女はぼくの性格を熟知しているので、それを今さら口にすることはしないだろう。


「この世に確かなものなんて、何一つないよ」

「相変わらずひねくれた――いや、歪んだ考えを持っているのね」

「失礼だな。こういう考えもあるってだけだよ」

「この世に確かなものなんて何一つない、かあ……」


 今度こそは独り言だろう。先ほどよりも声が小さかった。


「君はこの世に確かなものがあってほしいの?」

「そうね。できれば」

「どうして?」

「不安だから」

「何が?」

「わからないわ。でも、何か信じられるものがないと、何となく不安にならない?」


 人間は弱い生き物だから、と彼女は付け加え、どこ哀しそうな笑みを浮かべた。それを見て、胸が締めつけられるような感覚に陥る。

 今までこの世に確かなものなんてないと思っていたはずなのに、ぼくの口はそれとは正反対の言葉を紡ごうとしていた。ああ、我ながら単純だ。


「――もし、この世に確かなものがあるとしたら」

「え?」

「それは、ぼくと君がここに存在しているってことと、ぼくが君を愛してるってことくらいかな」


 すると、彼女は瞠目したが、すぐにくすくすと笑い始めたので、慣れないことは言うものじゃないな、と少し後悔した。


「ふふ、そうね。確かにそれは確実なものだわ」

「ああ、でも、『この世に』って言ってる時点で『この世』というものは確実なものになってる気がするけどね」


 最後にそう付け加えると、色々台なしね、とため息をつかれた。

 けれど、そう言った彼女のカオがどこか嬉しそうだったのは、ぼくの見間違いではないだろう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ