表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
last Eden  作者: 久遠夏目
2008年
15/73

君と、一秒後の未来

 君はぼくに死ぬなというけれど、君はぼくのために死ぬだろう?


「あーあ、早く死にたいなあ」


 ぼくがそうつぶやくと、彼はため息まじりに口を開いた。


「またかい?」

「また、とは結構な言い草だね」

「本当のことだろう?」


 返ってきた彼の笑みはとても嫌味っぽいものだったが、最近ぼくが「死にたい」というセリフをくり返しているのも事実だ。それはもう、口ぐせと言ってもいいほどに。これでは確かに、彼が呆れるのも仕方ない。


「君はどうして死にたいの?」

「うーん、何となく?」


 そう、本当に「何となく」なのだ。世界に嫌気がさしたというか、何をしても変わらない毎日が嫌になったというか――とにかく、あまり明確な理由はない。


「何となくで死にたいなんて言わないほうがいいと思うよ」

「どうして?」

「何となく」

「まったく、君も適当だね」

「君に言われたくないな」


 彼は、ぼくが死にたいと言うと、必ず死ぬなということを言ってくる。しかも、諭すような口調で。遠まわしで、直接的な言葉ではないけれど、そんな意味を含んだ言葉をかけてくれる。

 そうやって、ぼくが死ぬことを望まない人が一人でもいてくれるから、ぼくはまだこうやって生きていられるのかもしれない。


「君は死にたいと思ったことってないの?」

「ないよ」

「どうして?」

「死ぬに値する理由がないから」


 さらり、と発せられた答え。人生を謳歌している人ならば、まあそれが普通の考えだろう。


「でも、ぼくは君のためなら死んでもいいよ」


 続けて発せられた言葉は、あっさりとした彼の性格をよく表していた。

 ぼくは知っている。彼が本当は自分の命をこれっぽっちも大切になど思っていないということも、他人のために――ぼくのために簡単に命を捨てることができる人間だということも。

 今、死ぬに値する理由がないということは、いつか何らかの理由があれば死ねるということだ。そんな彼がぼくに死ぬなと言ってくれるのだから、ぼくは死ぬわけにはいかない。


「じゃあ、ぼくは君のために生きていなきゃね」


 にこりと笑ってそう言うと、彼は少し驚いたカオをして、


「明日からは君の『死にたい』を聞かなくてすみそうだね」


 と言って笑った。

 残念だけど、そう簡単にはいかないと思うな。まあ、少しはそれを口にする回数が減るかもしれないけれど。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ