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last Eden  作者: 久遠夏目
2008年
10/73

ぼくと君の死生学

 ぼくらは何のために生まれ、何のために生きているのだろうか。

 否、生きる意味なんて、どこにもない。


「君は、死ぬのがこわい?」

「当たり前じゃないか」

「どうして?」

「どうしてって言われても……」


 そう聞かれると、確かに明確な理由はわからず、ただ何となく、と答えるしかなかった。というか、これはもう本能と言うしかないだろう。


「じゃあ、君は死ぬのがこわくないの?」

「もちろん」


 彼はさも当たり前だと言うように即答し、穏やかに笑った。そこから感じられる余裕が悔しくて、ぼくは口を尖らせながら挑むように尋ねる。


「どうして?」

「死は、こわいことでも悪いことでもない。ぼくらの行き着く先、そして、在るべき場所へ還る方法だからさ」


 彼の主張は、何となく理解できた。確かに、生あるものはすべて死ぬ。だから、ぼくらの最終地点は「死」だ。

 だけど、だからと言ってこわくないかと問われれば、それはやっぱり違うと思う。ぼくはそれを素直に口にした。


「やっぱりこわいものはこわいよ。それに、ぼくはまだ生きる意味を見つけていない」


 ぼくは何のために生まれ、何のために生きているのか。ぼくはそれを知りたかった。

 だが、そんなぼくの想いを打ち砕くかのように、彼の顔に嘲笑が浮かぶ。


「生きる意味? 笑わせるね。そんなものはどこにもないよ」

「え?」

「ぼくらは生まれたときから死に向かって歩いているんだ。今だってそう、刻々と死に近づいている。だから、生きる意味なんてないんだよ」

「じゃあ、この命は何のためにあるっていうんだい?」


 ああ、なんて悲痛な叫び。ぼくはきっと、彼の答えを知っていたはずだ。

 だけど、そう問わずにはいられなかった。自分が間違っているということを認めるのは、とても難しいことだから。

 すると、ぼくの心中を見透かしたかのように、彼は口角を上げ、不敵な笑みをよこした。


「そんなの簡単さ。ぼくらは死ぬために生まれてきたんだよ」


 そんなの、信じたくない。どんなに生あるすべてのものがいつかは死んでしまうのだとしても、この命が死ぬためにあるなんて哀しすぎる。


「じゃあ、ぼくたちは生まれてこなければよかったじゃないか」

「そうだよ。生きる意味なんてどこにもないんだ。だって、ぼくらはここに存在してはいけないのだから。ぼくらのあるべき場所は『死』だ」


 ぼくらは何のために生まれ、何のために生きているのだろうか。

 いや、生きる意味なんて、どこにもない。

 ならば、生まれてこなければよかったのに。

 呆然と口を開けたままのぼくを見て、彼はただただ穏やかに微笑んでいた。




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