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5話-1(嘘じゃないですもの)

「ツゥゥ……」

「レンさん大丈夫ですか?」

ナワイを通りケートキに着いた。

小さな村の食堂にてレンとリンは休憩をとっていた。

旅をすると言う事は自分の足で歩くという事だが…こともあろうか自分の足でこんなに長いこと歩いたことのないレンは今頃になって疲れと筋肉痛が襲ってきたのだ


「だっ…大丈夫だ」

「レンさん!!顔が真っ青です」


仕方がないだろう今までこんな長い距離を歩いたこともなく、ましてやリンの住んでいる町さえ近くの森まで空を飛んで来たのだから…まさか自分が二足歩行で長く歩いて旅をすることは前のレンには考えもしなかった事だ。


「君、大丈夫かい?」

リンがテーブルの横を見るとは18〜20歳くらい、肩にはリュックをかけている。グレーのマントを羽織った白銀の髪の青年が心配そうな顔でレンを見ていた。


「あぁ、これは足が腫れているね?」

青年はそっとレンの脹脛をそっと触る

「あの…貴方は?」

「あぁ、ゴメン怪しい者じゃないよ?痛そうにしているので…つい声をかけてしまった。ビックリさせてしまったみたいだね?」

「いえ、大丈夫です」

「いや…君じゃなくて…彼の方が」

そう青年に言われてリンが見るとレンは青年の方をまるで動物が警戒し唸るように睨んでいた。


「レンさん?」

「なんか…野生動物みたいだね?君の連れは」

青年は軽くため息をついた後、持っていたリュックを下におろし、しゃがみ込んで何やらガサガサ探し始め、中から一枚の大きな葉を取り出した。そして今度はその葉に水をかけ葉をもみ始める。

「さて、ちょっと失礼するよ?」

そう言うと青年はレンのズボンをめくり手で揉んでいた葉を脹脛にあてる…するとヒヤっと冷たい感覚がレンの足に伝わってくると同時に何やら刺激の強い香りが鼻をついた。


「なっ?くせぇ…」

「何やらすごい匂いですね」

思わず二人は自分達の鼻を抓まずにはいられなかった。

「あ…やっぱりきつかったかな?でもこれよく効く薬草なんだよ」

青年はレンの足を摩りながら微笑んだ


「すみませんが…お客さん、この匂い他のお客の迷惑になるんだけど」

匂いを嗅ぎつけてか置くから店員らしい男性が出てきた、よく見ると他のお客達は皆鼻を摘んでこちらを見ていた。


「あはは…すみません営業妨害ですね?」

青年は立ち上がり店員の方を向いて頭をかき照れながら笑う。

「そう言う事で、君達ここにいたら不味いみたいだから移動しよう、移動!」

青年はポンポンと二人の肩を両手でたたいた後、クイッと親指を入り口のドアに向けた。


「はぁ?何勝手なことを言っているんだよ?お前?」

「レンさん、親切に手当てをしてくれた方に失礼ですよ?そんな風に睨んでは駄目です」

「リン…手当ってたかが筋肉痛で葉っぱ貼っただけだぞ?」

「それでも手当ては手当てです」

「はぁ…そうかよ?」


「じゃあ、話はまとまった事だし、外に出よう」

青年はリュックを背負い扉へと向かう

「そうだ、まだ自己紹介をしていなかったね?」

外へと向かう足を止めて青年は振り返り微笑む

「僕の名前はトホシロと言うんだ宜しく」



食堂をでて3人は少し離れた井戸場へとやってきた。周りには小さい桶が数個おいてある。少し離れたところには2人かけのベンチが横に二つ並んでいた。

「さっき村を探索している時に見つけたんだ、ご丁寧にベンチもあるし・・たぶん村の女性たちがお喋りする場所なんだろうね」


カラカラ……バシャン

トホシロは井戸の水を汲み上げ始めた

「トホシロさんはこの村の方じゃないんですか?」

「おい、リンどう見てもこいつの格好は村人って格好じゃないぞ?」

「あ、そうですね」


「ははは、これでも僕は医者なんだよ?あっ、レン君そこのベンチに座って」

言われる通りレンはベンチに座る

「お医者様なのですか?すごいです」

井戸から汲み上げた水をトホシロはそばにあった桶に移し変えた


「すごくなんかないよ、まだまだ未熟だし…」

「よいしょっと」


コト‥

トホシロは桶に入れた水をレンが座っているベンチまで運んで下ろした

「レン君、もう一度足見せてくれるかい?」

「あ?あぁ」

レンはトホシロに言われたとおり靴を脱いでズボンの裾を捲り両足を見せる

「失礼」

チャプチャプ

トホシロはさき程レンに貼った薬草を取り、汲んで来た水をかけレンの両足を洗いながら脹脛と膝をさする。

「関節の方は大丈夫みたいだな・・・しかし君は何処かのお坊ちゃまかい?」

「なんでだよ?」

「普通ただの筋肉痛でここまで腫れる人は始めて見たよ?よほど普段歩いてないんじゃないかっと思って」

「ぐっ…」

まさか自分はドラゴンで普段は四足で、移動する時は空を飛んでなんて言える訳がない

「ま…まぁな、普段歩かなくてもいい環境で育ったからな」

「やっぱり」

「そうなんですか?レンさんってお坊ちゃま?」

リンも知らなかったですという顔をする

(リンお前なぁ)


「新しい薬草に変えておいたから、明日の朝までとったら駄目ですよ?」

「朝までって…明日の朝までこの匂いとお付き合いするのか?俺は」

「まぁ、そういう事になりますね?」

ニコニコと微笑みながらトホシロはリュックから出したタオルで手を拭く


「さて、先を急ごうか?リン」

レンはベンチから立ち上がり歩こうとするがまだ痛みが来るのかうまく進まない

「うっ…」

「ダメですよ?レン君、今日はもうあまり歩かないほうがいいですよ?」

「レンさん…お医者さんの言うとおりです」

「しかしなぁリン?俺たちは先を急いでいるんだぞ?それにこんな小さな村に泊まるとこなんて…」

「ありますよ?泊まるとこなら」

「本当ですか?」

「えぇ、僕はこの村の教会に泊めてもらっているので宜しければ今夜一晩なら泊めて頂けるようお願いしてみますよ」

「げっ…教会?また教会?!」

「教会ですか?ぜひお願いします」

教会と聞いて嫌がるレンに対しリンはとても嬉しそうだ。


二人はトホシロの頼みで村の小さな教会だが泊めてもらえる事になった。


「ベッドが二つしかないからね、レン君とリンさんが二人で使うといいよ」

「あのトホシロさんは?」

「僕は大丈夫、教会の長椅子に横になるから」

「そんな…私が長椅子で‥」

「大丈夫、こう言う事はしょっちゅうさ?旅を長いこと続けているとね」

「じゃあ、遠慮なく俺は寝かせてもらうから」

そう言うとレンは二人を置いてさっさとベッドへと潜りこんだ

(…早いとこ寝ないと身が持たないぞ)


「じゃあ、僕は講堂にいるから」

「あ…トホシロさん」

トホシロは二人がいる部屋から出て行った


ベッドから起き上がったのはリンだった、隣ではレンが布団に丸まって眠っている‥が、先程から「うぅ」やら「あぐ」と口走っている。

「…レンさん何の夢を見てらっしゃるのでしょう?こんなに魘されて…それにしてもなんだか眠れないです…トホシロさん寝むれているでしょうか?」

自分達がトホシロの寝る場所を取ってしまったと言う罪悪感でリンは眠れなかったのだ

「少し様子見てきましょう…」

リンは部屋を離れ教会の講堂へと向かうことにした


数本の蝋燭が明るい火を灯しユラユラ揺れている、中央には女神像立ちその下に膝をついて手を組みお祈りをしているトホシロの姿があった。

祈りの最中のトホシロに気を使ってそっと近寄ろうとしたリンだったが、気配に気がついたのかトホシロは後ろを振り返った


「どうしたんだい?眠れないのかい?」


「あっいえ、まだ起きてらしたのですね?」

「うん、ちょっと考え事していてね?でももう寝ようかと思っていたところさ」

「考え事ですか?」

「そう、もうそろそろ僕もこの村を出ようかと思ってね」

「トホシロさんも旅をしてらっしゃるのでしたね?そういえば」


蝋燭の炎が揺れ女神像を照らすその姿をトホシロは優しく見上げる

「ある人の為に探し物…薬を探して僕は旅をしているんだ」

「薬ですか?」

「だけど中々見つからなくて…旅に出てもう5年になるかな?そろそろ帰ろうかと思っていたところだよ」

「どんな薬なのですか?」

「君に話してもわからないかも知れないけど…」

「言ってください?もしかして何か役にたつかも!」


トホシロはチラッとリンを見た後また女神像を見上げそのまま目を閉じた、誰かを思い出しているかのように…そして再びリンの方を向いて真剣な顔をして口を開いた。


「ドラゴンの…エンペラードラゴンって聞いたことあるかい?」

「えっ?」

思わぬ言葉にリンはビックリした。

「ドラゴンの中で最強と言われる伝説のドラゴンらしいんだけど…僕も実際見たことないからね?よくわからないのだけど」

「その…ドラゴンがどうかしたのですか?」

「うん、そのエンペラードラゴンの角…角と言っても神角という力の源になるところだけど、そこが妙薬になるらしいんだ」

「角が妙薬ですか?」

「そう、ある人がその病気にかかってしまって…それで僕はその病気を治すためにエンペラードラゴンを探す旅に出たってわけさ」

「そうですか…ところでどんな病気なのですか?その方大丈夫なのですか?トホシロさん5年もお会いしてないのでしょう?」

「うん、手紙を出して確認はしているから大丈夫だと…難しい病気で内容もその人の名誉の為に話せないんだ…ごめん」

「あ、いえ…こちらこそごめんなさい」

「ううん、いいんだよ…」

「しかしエンペラードラゴンなんて本当はいないのかもな…ドラゴンでさえ見なくなったと言うし…」

「…あ…あの」

「ん?どうしたんだい?」




「うっ!!いやだぁヤメテクレぇぇぇ」


ドサ…


「うぁ?」

「何だ…夢か?」

(まったく教会なんかで寝るから嫌な夢をみたぜ…おまけにベッドから落ちるし…)

ギシ…レンはベッドに手をついて起き上がる


「ヨイショッと…おっ?足の痛みがない」

「おい、リン起きろよ?足の痛みがなくなっているこれなら朝一番で出発…ってあれ?」


レンはリンのベッドをのぞき込むがそこに寝ているはずのリンの姿がない事に気がついた

「なんだ?トイレか?」


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