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1話(よろしくお願いします)

ここはラキ大陸にあるパーディ国のフォトンという小さな町。

特別何か有名なものがあると言うわけでもない平凡な町だ。



季節は春、澄み切った青い空を小鳥達も嬉しそうに追いかけっこしながら飛び回っていた。


「ちっ・・いい気なものだぜ、俺だって空から探せばこんな町なら一発で探せるのになぁ。疲れた‥確かこの辺りだよな?ベルの子供が住んでいるのって」


空を見上げながらぶつぶつと呟いている少年が一人、見た目が16歳くらいだろうか?目は大きく瞳はオレンジ色、髪の毛は金色だが光の加減でオレンジ色にも見える。

髪型はボサボサで後ろ髪はそんなに長くはないが一つに纏めている。

こいつがモテルタイプ?と言われるとビミョーだろう‥きっと。


「あふ…うーん天気もいいし何だか眠くなってきたなぁ」


歩いているうちにどんどん町の中心から離れ周りの景色は広い庭がある小さな教会らしき建物が建っていた。


「ありゃ…町外れに出ちまった」

「…まぁいいか。急ぐ事はないしこの辺りで休憩〜休憩♪いい芝生だし、ここなら茂みに隠れて見えないし」

少年は横になり気持ちよく眠りに入った。


キャッキャッ

しばらくすると教会から一人の少女とその周りを取り囲むように子供たちが出てきた。


「ねぇシスターリン今日は僕達と木登りしようよ」

「え〜?私とお飯事をするの」

女の子1人、男の子が3人の6歳くらいの子供に囲まれ、シスターリンと呼ばれている少女は15歳くらいだろうか?長く明るい茶色の髪に赤い大きなリボンで一つに後ろで縛っていた。目が大きな可愛らしい少女だ。


「はいはい、今日はお庭の草刈をしないといけないの、遊ぶのはそれが終わってからよ?」

「えぇ〜?!」

「だって、ほら神父様もお腰を悪くされてお世話になっている私がしないと…ネ?」

リンは優しく子供達に微笑みながら宥める

「ハ〜イ…」

「シスターリン、バイバイ〜」

子供達はリンの言うことを素直に聞いて町の方へと走っていった。


リンは駆けていく子供達を見送りながら小さく手を振る。

「さて、がんばりますか」

そう言うとリンは縛っているリボンをキュッと締め手に鎌を持った。


「えーっと、どこから刈ろうかしら」

辺りをキョロキョロすると茂みの間に枯れた草が出ているのを見つけた。


「あら…取りあえずこの草を刈りましょう♪」

リンは枯れた草を持ち鎌で思いっきり切る。


「イテェーーー!!」

いきなり大声を上げて茂みの中から人影が現れた。

「え…?」

行き成り大声を出しながら目の前に人が現れて、リンには何がおきたのか分からなかった。


「なっ!何しやがる!!こいつ!?」

現れたのは先ほど芝生の上に昼寝を始めた少年だった。

「あ、あら?」

リンの掌にある雑草を見る。いや、雑草ではなくどうやら少年の後ろ髪?だったらしい


少年はリンの手にある物体をみて自分の頭の後ろを触って確認をした。


「ない!?ナイナイナイ!!オレのツノォォ〜」

少年は顔が青くなり、後ろ髪を手でかき乱した。


「ごめんなさい、まさか人の髪の毛だなんて思わなかったものですから…その雑草かと思って切ってしまいました。」


少年はジロッとリンの方を見ると

「髪じゃねぇー!!この女!!これは俺の大事な角だ!!」

「はい?」

角と言われてリンはわけも分からず目をパチクリさせた。

「髪の毛ではないのですか?」


「ちっがーう!!オレ様を誰だと思っている?こんな人間の姿をしていても、オレ様はドラゴンの中の最強のドラゴン!!皇帝竜、エンペラードラゴンだぞ?!」

「はぁ…ドラゴンさん?それは申し訳ないことをしました」

そう言いながらリンはぺこりと頭を下げた。


(こいつ…もしかしてアホか?つい我を忘れてドラゴンと名乗ってしまったが…普通ドラゴンって聞くと恐がって逃げるか腰を抜かすのに…)

少年は驚かないリンじっと見つめた。

「あークソッ、これじゃあベルの子供も捜せねーよ!!」

少年は右手をズボンのポケットに入れ、左手で頭をかきながら町の方を眺めた。


「まぁ、偶然ですわ?私の母の名もベルって言いますのよ?正式名はベルフィナですけど」


「へぇそう…偶然だな〜ベルフィナの子供…っておいっ!?」

頭をかきながら混乱していた少年はニコニコと微笑む少女を見た。


「お前今なんて?」

「はい、母の名前はベルフィナって言いましたのですわ」


少年はそれを聞き目が点になった。

(…マジか?このトロそうな女が‥あのベルの娘?ドラゴンの間で『死者を送る鎮魂の鐘』と言われ恐れられた?)


「ち、ちなみに父親って」

リンは思いっきり微笑んで

「はいっアスベルって言いますの」


(ぎゃーやっぱり!!)

少年はその名を聞くと頭を抱えながらしゃがみこんだ


「あのぉ、そう言えば自己紹介がまだでした」

リンは少年の顔を覗き込む。


「あ…?」


少年はしゃがみ込んだ体制で少女の方を見上げる。


「私の名前はリンと言いますの、エンペラードラゴンさん」


一瞬日差しの為かリンの髪の色がオレンジ色に見えベルと重なった。

「オ、オレの名前はレンタイト、太陽の皇帝竜だ」


「エンペラードラゴンさんがお名前じゃなかったのですね?」


「おいおい、当たり前だろう?レンタイトが名前だよ」


「あは、そうですよね?すみませんレンタイトさん」

リンは恥ずかしそうに頬を赤らめて照れ笑いを浮かべた


「まっ、いいけどよぉ…」

つられてレンも頬が赤くなる


「それじゃぁ、これでもうお友達ですね?よろしくお願いします。」

そう言うとリンはそっとレンタイトに自分の手をあててやさしく包み込んだ。



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