All or None : 序章2:姉妹世界α:リトライ:宮本雪 : none:希望の夢、絶望のきざし
前書き
許してくれないから、自分も許さない。
認めてくれないから、自分も認めない。
そんな、お話です。
前書き
許してくれないから、自分も許さない。
認めてくれないから、自分も認めない。
そんな、お話です。
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人間、生きているだけで幸せって言うなら・・・・・・死んでよ。
君が死んだ分だけ、他人が幸せになれるんだから。
—人間に対する世界の許容性—
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どうしても、一緒にいたかった。
でも、ダメだった。
許さないって、言われた。
だから——————私も、あなたを、許さない。
—世界に対する人間の許容性—
All or None : 序章2:姉妹世界α:リトライ:宮本雪 : none:希望の夢、絶望のきざし
大切な人を、奪われた。
これからの人生を共に歩んで行くはずだった、大切なパートナーを————奪われた。
飛行機事故とか、そんな訳の分からない理由で・・・・・・
「ねぇ、慎也? わたし、どうすればいい? どうしたら、いいの?」
遺体すら、帰ってこなかった。
墜落し、海に叩き付けられた飛行機の機体だって、バラバラだったという。
だったら、生身の人間がまともでいられる理由なんて————
そう。
そうだ。
今の私に残されたのは、彼の遺影のみ。
それは幻影のそれと同じで、現実感が無い。
日だまりのまどろみに身を委ねていれば、どうかすると、ふと彼が帰ってくるような錯覚さえ覚える。
「おとうさんも、おかあさんも、帰ってこいって。ねぇさんにいたっては、絶対に連れ帰るって言ってるの・・・・・・」
子供を身ごもった女が一人、都会でやっていけるわけが無い。
それが、両親と姉の主張だった。そして、それは事実——とまでいかなくても、難しいことであることは、確かだ。
でも。
「此処から始めるって、約束したじゃない! ここからやり直すって、言ったくせに!!! なんで!? なんで、こんな、ふうに・・・・・・」
でも、彼の遺体は海から上がってないんだ。
彼が死んだ証拠なんて、世界のどこにも無いんだ。
ひょっとしたら彼は、運良く助かって、どこかの国に流れ着いているかもしれない。そしたら、今は・・・・・・・そう、記憶喪失とかで、私に連絡が取れない状態にあっても不思議じゃない。
飛行機から投げ出された衝撃で、そんなふうになってるとしたら————十二分に考えられる。
だったら、探しにか無きゃならない。彼が帰って来れないなら、私が迎えにいってあげなきゃ・・・・・・・・そんな、奇跡みたいなことがあれば、彼は、私は!
「バカ! アホ! なんで!? この、うそつきうそつき!!!!」
認めない! 認めない! そんなの、ひどすぎる!
だって、なんで、彼が!? ほめられた人じゃなかったけれど、悪い人じゃなかった。悪いことはしてたけれど、死ななきゃならないほど、そんな罪を・・・・・・・
『大丈夫だよ。彼は、必ず帰ってくるから』
・・・・・・彼は、そんな罪を————え?
『彼は、帰ってくる。彼は運命を超えて、君の元に返ってくるよ。だから、待っていてあげてよ。もうすぐ、彼は君のもとに・・・・・・』
————世界が、光に包まれる。
まどろみが粘性をまし、世界の密度が私を締め上げる。
『世界って奴はね、自分が一番正しいと思ってるんだよ。だから、本来は君なんかが何と言ったって、聞く耳を持たない。ちっぽけな人間の願いなんて、世界に一切の価値がないんだから。
でも、ね?』
苦しい。
息が、苦しい。締め上げられる。ぐりぐりと、締め上げられる。意識が、揺らぐ。
フワフワと揺らぎ、浮かび上がっていく。
『でもね、僕はそんな『世界』を許さない。奴らが人を認めないんだったら、人だって奴らを認めなくていいはずだよね?
だから、救ってあげる。叶えてあげるよ。僕には、それが出来るから。
『君たち』の、『願い』を叶えて————』
※
光が、ぬくもりが、世界に溢れていた。
ほんの少し目を開くだけで、窓から差し込む日の光が、私を包んでくれているのが分かる。それはきっと、彼が私に残してくれた、ぬくもりだったんだと思う。
————どうやら、うたた寝をしてしまっていたらしい。
ほのかなぬくもりの中、彼の遺影を前にしてしまったからだろうか?
だから、あんな、夢を・・・・・・でも。
「今日も頑張るね、慎也。わたしは、絶対に大丈夫。どんなことがあっても、この子だけは守るから。だから、安心して。ぜったいに、この子を守ってみせる。だから、慎也————」
どこからか見守っていてねと、私——宮本雪は、彼の遺影に嗤いかけたのだった。