All or None : 序章1:姉妹世界α:ねじれた生の始まり2:宮本慎也 : All
all編、スタートです
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ー孤独と縁ー
孤独は神をも殺す毒だが、縁は魂を首元から縛り上げる鎖だ。
故に、人はどうあがいたところで、生の苦しみから解放されることは無い。
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ー役割ー
あなたが誰だろうと、かまわない。
もちろん、あなたが「あなた」として振る舞っている限りにおいて――だけれど。
All or None : 序章1:姉妹世界α:ねじれた生の始まり2:宮本慎也 : All
医者が言うには、俺には軽度の記憶障害が残されているということだった。
――――――いや、「そういうこと」に、なった。
「御退院おめでとうございます、大輔様。さあ、こちらへ」
笑顔で俺を車に誘導する女性――彼女は、ユエだ。俺を支える、側近の一人。そして、その後ろで俺の荷物を車に運び込む白髪の男性は、俺のもう一人の側近。名は・・・・・・春日とか、いったっけか?
「ありがとう」
俺は二人に向かって礼を言い、車へと乗り込んだ。そのときなぜか、二人は不思議そうな顔をしていた。
・・・・・・また、失敗したのかも知れない。車内は無駄に広く、悠々と足が伸ばせるほど。「かつての俺」の愛車、タントではこうは行かなかった。
「出発致します、大輔様。さて、本日のスケジュールですが・・・・・・」
病み上がりの俺に、ユエは淡々と「今日の予定」を告げていた。
その予定の100%は、仕事――家業に、関する事だった。
まさに寝る間も惜しんでという表現が正しいような、そんな鬼畜なノルマが、今の俺にはかせられていた。
本当に彼女は、おれの秘書なのかと疑いたくなる。
百歩譲ったところで、俺は生死の境を彷徨った人間だ。
今でこそ何とか体裁としては通常の生活を送れるようになっているが、医者の方からは仕事に関しては適度に控えるように言われていた。
・・・・・・まあ、そんなこと、現状を鑑みれば、些細な事か。
「さて、大輔様。目的まであと5分ほどです。何かご質問等ございましたでしょうか?」
――――――半分以上、俺は話を聞いていなかった。
だが、次の予定くらいはさすがに、頭に入っている。だから俺は――
「いや、大丈夫だよ。ただ、なにぶんこちらも病み上がりだから、うまくやれるか分からない。サポートをお願いできるかな?」
―――俺は。
俺は――宮本慎也は、菊池大輔の皮をかぶり、そう、彼女に微笑んだのだった。