己の自尊心
ミューナ。
四貴族のひとつ、ウォータプル家の血を引く少女。
そんな彼女と決闘をする事になった。
「始め!」
リオン先生の掛け声がステージに響く。
「水魔術・水衝波!」
いきなりミューナが仕掛けてきた。
途方もない量の水が俺を襲う。
とっさに俺は時間を止める。
本来なら今、時間を止めている間にミューナを倒せば俺の勝ちなのだが、流石にそれではミューナがかわいそうだ。
何か方法を考えよう。
今の俺はリオン先生から、極力魔術を使わないように。また、体術士として戦うように。と言われている。
そんな事を考えていると、俺はまだ時間を自由に操ることが出来ないので、時間が動きたしてしまった。
そして目の前に迫る水の壁!!
取り敢えず創造能力で身体強化をした。
そして俺は上に飛び、攻撃をよける。
一応スピードをMAXにしてがむしゃらに突っ込んでみるか!
「ミューナ!覚悟しろ!」
俺は足に思いっきり力をいれてミューナの背後にまわる。
「遅い!」
しかしミューナはそれを完全に見切り、タイミングよく俺の腹に蹴りをいれてきた。
「ぐっ!」
ミューナの細い足からは想像出来ない程の衝撃が俺の腹にダイレクトに伝わった。
「実は私、元体術士なんです。だから駆け出しの体術士なんて私の敵ではありません。」
まじかよ!
体術士だったのに、サラを圧倒する程の魔術が使えるって・・・
こういうのを天才って言うんだろうな。
「それでは覚悟してください!」
そう言い放ち、ミューナは俺をタコ殴りにする。
やはりとても速い。
創造能力で強化した俺の肉体でさえも悲鳴をあげはじめている。
「このっ・・・!おりゃー!」
俺は手足をバタバタとバタつかせミューナと距離をとった。
「青魔術・水牢!」
すると半径1メートルくらいの球体の水の塊が俺を覆う。
い・・・息が出来ん!
俺が動いてもこの水の塊がついて来るから逃れることが出来ない。
しかも青魔術って高等魔術じゃね?
「ギブアップするなら今のうちですよ?」
ミューナが情けをかけてきたが俺のプライドが許さない!
俺はいいことを思いついた。
俺は制服のポケットの中に手を突っ込み、そこでホースを創造した。
俺はそれをあたかも元からポケットに入っていたかのように取り出し、端を口でくわえ、もう片方の端を思い切り水の球体の外へ投げる。
このホースは長さが1メートル以上あるので、球体の外の空気が、ホースを伝って口に運ばれてくる。
これで息が出来る!
「な、なんでホースなんかがポケットの中に!?」
「どーしよーが俺の勝手だろー」
ホースをくわえたまま喋る俺。
「し、しかしその状態で走ることなんて出来ないです。水魔術・水衝流撃!」
水流がぐるぐるとうねりながら俺の方へ突っ込んできた。
しかし俺の周りにはなお水球体があるため、速く動くことが出来なかった。
「ぐぉぉぉ!」
俺は無様に吹っ飛ばされた。
「これで私の勝ちですね。」
「・・・」
「声もしませんわ。もしかして死んじゃった?」
「・・・!」
俺はなんとか無事だった。
水球体が逆に衝撃を吸収してくれたようだ。
が、加えていたホースが何処かへ言ってしまったため、何も話せない。
ていうか話しても聞こえない。
「い、生きてるとは正直驚きました。しかしこれで終わりにします。」
やばい!
これは負けてしまうかもしれない。
こうなったら・・・
俺のプライドが邪魔をするがこの際仕方ない!
「いきます!青魔術・水・・・」
時間を止めた。
俺はゆっくり動いてミューナのところへいく。
そしてナイフをミューナの首筋に押しつける。
次の瞬間時が再度動き出した。
「!?いつの間に!」
驚くミューナ。
まあ無理もないだろうな。
「これが俺の特殊能力。時間を止めることが出来るんだ。」
「あ、そういえば朝、リオン先生との戦いで使ってましたね。忘れてました~!」
なんかやけに反応軽いな。
もしや裏があるのでは!?
「私の負けで~す」
「勝者、ミヤイチ!」
だがこれは罠なんだろ?
俺にはわかっているぞ!
「なにやってるの?もう戦いは終わったのに~」
え?
「はやく首筋に押し付けたナイフどかしてくれないですか~?」
いやいや、戦闘中と、負けを認めてからの態度全然違うやん!
やはり戦闘狂かっ!




