先生の能力
改めてリオン先生と対峙する。
「では。再開します。」
リオン先生のその言葉と同時に俺は創造能力で肉体強化を済ませる。
「創喚・ 天叢雲剣! 」
俺の手に粒子のような物が集まり、1本の日本刀を形成する。
それを細目で見届けたリオン先生は口を開いた。
「転送・審判刃!」
するとリオン先生のグローブから色々な装飾がついたナイフが出てきた。
「先生だからって手加減はしませんよ?」
俺はそう言うと脚の筋肉に魔力を集め、間合いを一気に縮める。
先生はナイフを体の前でクロスさせ、防御の姿勢をとったが俺はその上から刃を叩きつける。
しかし今の俺は筋力がかなり増加されている。
その影響でリオン先生は力負けし、吹っ飛ばされた。
しかし先生はそれを予期していたようで、放物線を描いて飛ばされて行った先には魔法陣が展開されていた。
「風魔法・虚風!」
先生がそう演唱すると魔法陣から適度な風が吹き、衝突の衝撃を吸収した。
そしてその流れのまま演唱した。
「転送魔法・重力刃!」
すると先生のグローブから2本の装飾のついたナイフが現れた。
そしてそのナイフは先生の手を離れ、俺の方へ飛んでくる。
俺はそのナイフを間一髪でよける。
「創換・虚空砲!」
俺の手には銃が握られていた。
リーチの短い剣だけでは埒があかないと思ったからだ。
とりあえず2発ぶっ放してみたが軽くあしらわれた。
そんな感じで暫く戦局がどちらかに傾くことはなかった。
実際、創造能力というのはモノを創るだけであり、想像が現実になるなどというものとは程遠いチート能力だ。
しかも体術士という枷があり、まだ知識も持っていない俺が魔術を使おうとすれば、この世界にない魔法をつくってしまう事になるかもしれないので迂闊に魔術を使うことも出来ない。
これは結構キツイ戦いかもしれない。
そんなことを考えていると不意に先生が声を出す。
「あんまり楽しませてくれないわね。」
そう言い、なにやら長ったらしい演唱を始めた。
長い演唱ほど危険な魔法だ。
俺の直感がそう知らせた。
俺は銃弾を2発撃った。
しかし次の瞬間それは空中を彷徨っていた。
俺は一瞬時が止まったのかと思った。
「これは私の特殊能力。無重力空間を作り出せるの。」
ふと周りを見ると中庭全体に魔法陣が張ってあった。きっとここからでれば無重力空間を脱出出来るのだろうが、それでは場外だ。
先生はたくさんのナイフを転送し、矛先を全てこちらに揃えていた。
「このナイフだけは無重力空間を自由に移動出来るの。でも貴方は動けない!」
その声と共にナイフの雨か俺を襲って来た。
俺はふと思い出した。
さっき弾が止まった瞬間の時が止まったという感覚。
何処かで味わったことがあった。
そういえば前に弓成先生が時を止めていた。そしてその弓成先生の能力を全て転送されたのだから俺もその能力を使えるはずだ。
俺は深く念じた。
そして目を開けると、全ての物体が、「動」という動作を手放していた。
俺は時を止めたのだ。




