第三夜
「今日も来たか。」
「来ちゃ悪い?」
彼女は腰に手を当て、河原に寝ころんでいる僕を見下ろした。
「そんなことより、ちょっと立って。」
「はあ?」
「早く!」
無理矢理僕は立たされた。それなのに、彼女は不満げに呟いた。
「背が低い。」
思わずこちらもムッとなる。
確かに背はあまり高い方ではない。しかし、彼女よりは高い。
「ま、あんまり贅沢も言ってられないか。ダキョウしましょ。」
随分な言いぐさだ。
「ね。ダンスしましょ。」
「………はあ?」
そして素っ頓狂な言動。
僕は眉間にしわが寄るのを自覚した。
なのに彼女はすっかり無視をして、僕の手を取り踊り始めた。
はっきり言ってしまうと、ウサギのダンスの方がまだ鑑賞に値しただろう。
ダンスの心得など僕にはないし、彼女も同様だ。
月のスポットライトもない、新月の秋の夜空の下。
僕たちは実にぎこちなくダンスもどきを踊っていた。
「あー、疲れた。下手くそなんだもん。」
「人のこと言えるか。」
踊り疲れた僕たちは、河原に仰向けになった。
月のない夜空には、街の明かりにかき消されながらも、星が瞬いている。
よく、人が死ねば星になるといわれている。
しかし、それならばなぜ、夜空は星でいっぱいにならないのだろうか。
ふいに、彼女が立ち上がり、空を仰いだ。
僕は体を起こしたが、この角度だと彼女の表情はよく見えなかった。
また踊りたいなどと言い出すのだろうか。
僕は内心身構えていた。
「星って、空に咲いた花みたいだね。」
唐突に。本当に唐突に、彼女は呟いた。
僕はただ見つめていた。
白いワンピースが夜風に翻る。
彼女は黙って、遠いところを眺めていた。
細く白い体が夜の闇に浮かび上がっている。
僕は一つ首を振ると、改めて星空を仰いだ。
この時間の終わりを、確かに予感しながら。




