第一夜
「おひとり?」
夏の残滓もぬぐい去られた、ある秋の夜。
河原の原っぱで寝転がって夜空を見上げていた僕に、そんな声が聞こえた。
頭の向きを変えると、白い顔が覗き込んできた。
「ね、となり、いい?」
どうぞ、と僕が口を動かす前に、その人間は僕の隣に座り込んだ。
そして、不躾な視線で僕を見回す。
「珍しさだけなら、君だって同類じゃないか?」
僕は上半身だけ起こして、少しばかり睨んだ。
「女の子がこんな時間に一人で。しかもこんな時季にノンスリーブのワンピースだなんて。」
すると彼女は、むっとした表情で言い返してきた。
「何よ。そっちこそ、こんな時間に外歩ける年じゃないでしょ。
第一、私、もう18なの。世間の子は夜遊びしててもおかしくない年頃よ。」
「自分の責任を自分でとれない子どもが生意気いうな。
それと。ご期待に添えず非常に残念だが、僕はとっくに成人しててね。」
「うそっ。」
彼女は心底驚いたようだった。疑わしげに僕の顔を見る。
僕は嘆息した。彼女の行動も、まあ当然かもしれない。
下手をすれば、中学生にだって見えかねない容姿なのだから。
「ホントにぃ?」
「本当。」
「うそじゃないのぉ?」
「こんなところで嘘ついても仕方ないだろ。」
まだ納得がいかず、ぶつぶつ言っているようだが、僕は無視した。
「で、病院抜け出して君は何をしてるの。」
「なんで知ってるの!?」
「あ、やっぱりそうなんだ。」
僕の言葉にきょとんとし、次いで顔を真っ赤にした。
「だましたのね!」
「騙すなんて人聞きの悪い。ただ確認しただけだよ。」
僕がすました顔で言ってやると、彼女は立ち上がって僕を見下ろした。
「帰る。」
「まあ、そう怒らずに。」
「怒るわよ!」
そう言い捨てると、彼女はワンピースを翻して走り去っていった。
僕は静かになった河原に再び体を預け、秋の夜空を眺めることにした。




