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不思議なクリスマスカード  作者: 地野千塩


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8/40

弱い時にこそ強い

 人気インフルエンサーも楽じゃない。


「げー、またアンチがコメントしてるし、デマも書き込んでるし」


 自宅のベッドでゴロゴロしながらSNSをチェック中の亀川真実。SNSはマミマミという名前で活動し、フォロワーも増え、いわゆるインフルエンサーをしていた。化粧品メーカーの案件などもあり、懐も潤い、バイトもとっくに辞めている。たぶん同年代の大学生より裕福だ。


「イライラするな。すぐブロックだし。運営に通報もしておこう」


 そんな真実は完璧主義だ。こうして少しでもアンチコメントが来るにも許せない。SNS上でも完璧ないマミマミとし、メイクやファッション、生き方なども作りあげて見せていた。実際、それに見合うほどの努力もしていたし、こんなSNSにアンチコメントを送ってくるような人たちとは次元が違うと思い込んでいたが、イライラが消えない。


「なんなん、もう」


 最近はSNSを見ているだけでイライラする。仕方ないから、二十四時間営業のジムに行き、軽く運動してきた。汗をかき、スッキリしながら自宅に帰ったのに、また変なコメントが来ていた。しかもDMだ。


「何これ、クリスマスカード?」


 そこにはクリスマスカードの画像も添付されていた。シュトーレンやツリーの画像。いかにもクリスマスらしいデザインだったが、妙な言葉も刻まれていた。


「わたしは弱い時にこそ強いからです。第二コリント12章10節って何? 日本語的、なんか意味がおかしくない? 弱い時に強い? アンチの仕業?」


 送り主はいつものアンチではなかった。三毛猫文具店という文房具屋のアカウントだった。昭和レトロな雰囲気の文房具屋らしい。店名通り三毛猫の写真も並んでた。この三毛猫が妙だ。背中に天使の羽をつけてる。


「何これ、AI? AI猫動画みたいなの?」


 さらに奇妙なのは三毛猫文具店を検索しても、公式ホームページはおろか、地図上にも出てこなかったことだ。このアカウントもフォロワー0人。思わず鼻で笑ってしまった。記事にも全く「いいね!」がついていないし、店のSNSとして終わってる。


 しかし、このAI猫みたいのは可愛い。なぜ天使の羽をつけているか疑問だったが、実家で飼ってるチビコと似てる。真実自身もこんな店には心当たりがなかったが、あの画像の変な日本語が気になる。


「弱い時にこそ強いって何? 変な日本語。矛盾していないの?」


 妙に心に引っかかってしまう。フォロワーは何か知っているのだろうか。SNSで聞いてみると、すぐ返事がきた。


 どうやら都市伝説らしい。三毛猫文具店という不思議な店が妙なクリスマスカードやDMを送っているという。神様や天使が送っているという噂もあり、特別に選ばれた人しかもらえない。


「嘘、そんなまさか」


 そんな都市伝説は信じられない。すぐに三毛猫文具店のアカウントに「迷惑行為はやめて」と送ろうとしたが、おかしい。アカウントが丸ごと消えていた。


「え、どういうことよ? 見間違いだった?」


 ますます困惑するが、さらにフォロワーに聞くと、この画像の言葉は聖書の中にあるそうだ。聖書というとキリスト教だ。宗教だ。今はクリスマス時期とはいえ、宗教というと抵抗はある。


「へえ。この聖書の言葉、フォロワーによると人の弱点や欠点こそ、神様が助けてくれて力になるって意味なんだ」


 それでも何か気になり質問を続けると、丁寧に言葉の意味を解説してくれるフォロワーがいた。どうやらクリススチャンらしいが、自分の弱点や決定、失敗したことを晒した方が上手く行くんだという。人から好感ももってもらいやすいし、打ち解けやすいとか。それに神様がより助けてくれる実感があるらしい。


「そっか……」


 宗教の本の言葉というと身構えるが、それは一理ある。実際、真実自身、完璧なマミマミを演じるのに疲れていた。確かにフォロワーは増える。ファンだと言ってくれる人もいる。それ故に完璧主義にもなり、少しのアンチコメントにも敏感になってしまっていた。


「私も弱味を見せてもいいのかな?」


 そう思うと、肩の力が抜ける気がした。


 以来、生理前が重く、ダイエットをリバウンドした過去、小学生時代は陰キャだったこと、実家が貧乏だったことなどもライブ配信で語ってみた。


 勇気はいった。こんな弱点、恥でしかない。その上、完璧なマミマミとギャップもある。嫌われるかもしれない。またアンチコメント、いっぱい来るかもしれない。それでもなぜか「弱い時にこそ強い」という言葉が頭から消えなかった。


「え、そうでもない? あれ、逆にマミマミに親しみわいたってコメント、いっぱいついてる。フォロワーも増えてる……。同じ立場だったって子も案外多いの……?」


 その結果、予想外だった。さらに肩の力が抜け、自分の弱さが愛おしくなってきた。


 

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