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不思議なクリスマスカード  作者: 地野千塩


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金銭欲はあらゆる悪の根

「何これ。イタズラ?」


 郵便受けに妙なカードが入っていた。幸田凛音様。確かに自分あてらしいが。


 デザインはクリスマスらしい。ツリーやリースのイラストもついていたが、なぜかサンタがいない。クリスマスといったらサンタではないのか。


 しかもこのクリスマスカード、妙な言葉も書いてあった。


「金銭欲はあらゆる悪の根。第一テモテ六章十節って? 意味わからん」


 その上、差し出し人の名前も住所もない。三毛猫文具店とは書いてあったが、何か気持ち悪い。


 コスパやタイパが大事だ。凛音は現在、転職活動中だった。二十代前半は売り手市場とも言われてる。新卒採用の会社ではブラックだったし、今度こそはいいところに入らないと。


 こうして奇妙なクリスマスカードはマンションの共用ゴミ箱に投げ、自宅に帰ると、求人サイトと睨めっこ。


「やっぱり給料、福利厚生がいいとこに入りたいよね。お、こっちの会社はボーナスいいじゃん。大企業ってやっぱりお得」


 転職活動中といっても特にしたいことはない。とりあえず正社員になって同年代と同等かそれ以上は稼ぎたい。お金が稼げればなんでもいい。


 そして給料がいい会社に応募しまくった。内定もいくつか出た。その中で一番給料のいいIT企業に入った。プログラミングにも自信があったし、なんとかなると思ったが。


 その見通しは甘かったらしい。AIの波もあり、基本的なプログラミングができるぐらいでは全く即戦力にならない。研修も厳しく、毎日叱咤され、帰る時刻は夜中の一時過ぎだった。


 気づくとストレスでブランドもののバック、時計、アクセサリーなどを購入し、手元に何も残らない。妙にビールの味が美味しく感じ、休日の夜は酒浸り。


 健康も害し、結局、会社は一年しか続かなかった。体調不良で転職活動もできない状態で、かえって悪くなっているような?


 そんなクリスマスが近づいてきたある日。郵便受けに何か入っているのに気づいた。妙なクリスマスカードだ。去年と全く同じものだった。


「金銭欲はあらゆる悪の根か……」


 家に帰り、検索すると、聖書の言葉だと知った。お金自体は悪くない。生活を支えたり、貧しい人を助けたり、医療技術の向上にもお金は必要だ。でも、それを一番にしてしまった時、人間は幸せになれない。どっかの教会のブログに書いてあった。


 イタズラだと思ったクリスマスカードだが、じっくり見つめてしまう。確かにお金を一番にして仕事を選んだ結果、このザマ。かえって前より状況が悪くなった。あのクリスマスカード、「誰か」が警告してくれたかもしれない。その「誰か」はわからないが。


 なぜか、もうあんまりお酒は飲みたくない。クリスマスだからワインを買っていたが、シンクに流してしまった。血の色みたいなワインだった。酔いたい気分じゃない。むしろ目を開けて、しっかりこの警告を受け入れてもいい気がしてきた。


 海外と比べたら、日本はまだまだ豊かだ。必要以上に稼がなくても、最低限の生活はできるだろう。本当に必要なものを考えると、案外なんとかなりそうだと気づく。


「うん、ちゃんと仕事とか人生とか向き合って考えてみるよ……」


 再びクリスマスカードを見つめる。正直、耳が痛い。


 それでも甘い言葉で現実逃避するより、いいかもしれない。この言葉も良い贈り物になる気がする。

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