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不思議なクリスマスカード  作者: 地野千塩


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与えることは受けるより幸い

 SNSによると、独身中年男は気が狂うらしい。金井昌司、四十五歳。大丈夫、まだ気は狂っていないはず。


「ふん、結婚とか無駄だし、真面目に働いたら負けだから」


 そんなSNSを見ながら、昌司はぶつぶつ文句をこぼす。


 自室は子供部屋に近い。一応一人暮らしはしていたがアニメ、漫画、音楽のグッズが溢れてる。本棚はマーケティングや心理学、投資、経営学などのビジネス書がどっさり積まれていた。そこだけた異質。


 氷河期世代で長年非正規だった昌司だが、コロナ渦をきっかけにどうにかしようと考えた。どうせ仕事も首にされたし、時間はある。


 投資はあんまり上手く行かなかったが、見様見真似でネットで情報教材を売る出したら、そこそこ売れるようになった。投資と合わせ、今はいわゆるFIRE中。独身一人暮らしだったが、金はある状態だった。


 また暇な時間が増えた。そんな時はSNSを見てしまうが、どこを見ても昌司のようなおっさんには風当たりが強い。


「なんだよ、こういう悪口、婚活高望み女が書き込んだりしているのか?」


 ぶつぶつと一人で文句を言うが、虚しい。最近は運動不足で体調も悪い。憧れのFIRE暮らしなのに、楽しくはない。漫画やアニメも飽きてきたところ。


 そんな時だった。何気なくSNSを見たら、DMが届いてた。


「誰だよ? は? 三毛猫文具店ってなんだ?」


 しかもDMにはクリスマスカードの画像も添付されていた。赤と緑のデザイン、けっこう派手だが、変な言葉もついてる。


 使徒の働き 20:35より

 弱い者を助けることの大切さ、主イエスご自身が語られたことを思い出しなさい。『与えることは受けるよりも幸いである』。


「は? 何これ?」


 そう文句が出た瞬間、DMが消えた。送り主のアカウントもない。


「何これ? 詐欺?」


 一円も損はしていないが、夢か?


「ふん、どいつもこいつもなんだよ……」


 文句ばっかり出てくるが、そろそろ新しい情報教材も作らないと。情報弱者向けに副業で一発逆転的なグレーな情報を煽って売ろう。


 簡単だった。こういうグレーさ、案外、切迫つまり焦っている連中には効くらしい。一発逆転とか、誰でも簡単というキーワードが重要。いかにクリックさせるか、導線を引くのも重要。例えそれがグレーな情報であったとしても、買わせれば勝ち。特に法律も違反していないし、情報弱者向けに商売する方が楽。


「そう思ってたのに、なんか虚しいなー」


 今の時期はクリスマス。SNSには恋人や友達同士の写真や画像がいっぱい。


 孤独なおっさんの画像などない。わざと無視されているかのように、ない。


 そんなSNSを見ていたら、笑顔なんて作れない。やはり、孤独なおっさんは気が狂うのか。


 そう思った時、あのクリスマスカードの画像を思い出す。夢か幻だと思っていたが、ふっと頭に浮かび、こびりついて消えない。


 使徒の働き 20:35より

 弱い者を助けることの大切さ、主イエスご自身が語られたことを思い出しなさい。『与えることは受けるよりも幸いである』。


「与えることは受けるより幸い……?」


 わからない。主イエスとかあるので、宗教関係かもしれない。胡散臭いのは確かだが、今までは自分の事ばかり考えていた。考え過ぎていたといっていい。これまでの不幸、そんな考えが原因か?


「わからない、わかんねぇ……」


 それなのに、頭からあのクリスマスカードが消えない。


 結局、街でやってる年末助け合い募金にお金を入れてしまった。家の近所に落ちてたペットボトルのゴミも拾ってしまう。道に迷っていた老人にも声をかけてしまった。


「わからない、わかんねぇ……」


 口ではそう言うが、こんな行動とった自分、そんな嫌いでもなかった。それどころか、自己肯定感、ちょっと上がる。今のところ、気が狂わなく済みそうだ。

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