表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不思議なクリスマスカード  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/40

将来と希望を与える

 ニュースでは暖冬といっていた。実際、風はそう寒くもないクリスマスイブ。


「寒ぅ……」


 絹井愛美は呟く。クリスマスの街を歩きながら、風が身に沁みる。元々冷え性ではあったが、転職活動が上手くいかない。年齢もアラフォー。サービス業と事務職の経験は積んでいたが、市場価値は低かったらしい。連日、お祈りメールが届いていた。


 こうして心も身も冷え切ったまま、一人暮らしのアパートへ帰る。郵便受けを見ると、ピザやケーキのチラシが溜まっていた。それだけでウンザリしてきた。昨日はわざわざ郵送で「お祈り」されたし、どっと疲れてきた時だった。


「何これ?」


 郵便受けにチラシ以外のものがあった。それはクリスマスカードだった。ツリーがデザインされ、派手なカードだ。赤と緑がキラキラしている。


「誰から?」


 送り主はわからない。三毛猫文具店よりとあった。その横に猫のスタンプも押してあったが、変なデザイン。猫なのに、天使のような羽根がついてた。


 変なカードだ。怪しい。イタズラかもしれないが、この猫は可愛い。元々、猫好きの愛美はうっかり部屋まで持ってきてしまった。それに丁寧に「絹井愛美様へ」ともある。手書きだ。どうも悪意や悪戯とは無縁な雰囲気だ。


 暖房をつけ、ソファに座る。ようやく冷たさから解放された。目の前のテーブルの上には、昨日送られてきた「お祈り」も置いてあったが、この不思議なクリスマスカードは一体なんだろう。


「しかし、このカード……?」


 カードの裏面、手書きのメッセージもあった。「わたしはあなたがたに将来と希望を与える。エレミヤ書 29:11」とあるが、どういうことか。この変な数字は何の意味があるかわからない。


 綺麗な文字だ。丁寧に書いている。やはり悪戯には見えないが、将来と希望という文字を見ていたら、目の前がふにゃけてきた。


 気づくと泣いていたらしい。将来とか希望とか、今の愛美には遠いものだったから。まぶし過ぎる。胸が詰まってしまったらしい。


 この言葉、ネットで調べると旧約聖書の言葉らしい。文脈はわからない。どういう意味で語られた言葉かは不明だが、応募した会社から送られてきた「お祈り」よりは、まぶしく見えてしまうから、不思議。不思議なクリスマスカード。


 悪戯の可能性も高いだろう。いくらクリスマスだからって宗教的なものには抵抗があるが、「誰か」から背中を押されている気がする。その「誰か」は目の前の暗い現実より、ちょっと遠くの未来でも見えているのだろうか。そんな気がする。


「ま、今日はクリスマスイブだ。転職活動も忘れてみるか」


 さっき郵便受けにあったチラシで宅配ピザを注文した。ポテトやオレンジジュース、小さなケーキも一緒に頼んだ。


「来るの楽しみだな」


 注文を終えると、楽しくなってきた。そうだ、今はまだ手元にないだけだ。ピザが届くのは決まってる。


 今の状況もそうか。明るい未来は決まっているから、ただ安心していればいいのか。そんな気がするが。


 再びあのクリスマスカードを眺める。誰が送ってきたのかもわからないが、じっくりと眺めていると、もう涙は出てこない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ