信仰は望んでいることを確信し、見えない事実を確認すること
とにかく願いを叶えたかったし、成功したかった。
「引き寄せの法則の鍵は信じることと確信です。既にあると確信すれば、願いが叶うんです」
水井晶子、三十六歳、現在スピリチュアルカウンセラーの仕事をしていた。今日も自宅兼仕事部屋で、動画を撮影していた。引き寄せの法則について、どんな風にやれば叶うか語る。
晶子の見た目、モデルのような美人だ。実際、昔はアイドルもしていた。全く売れず、ヨガ講師をしていた頃、スピリチュアルに出会い、こうして仕事になった。
最初は全然売れなかったが、成功したかったし、フリーランスにもなりたかった。もっともアファメーション、イメージング、メンタルブロック解除など全く効果はなかった。フリーランスの才能も特になかったが、なぜかこうして願いは叶ってる。
口では引き寄せの法則をレクチャーし、顧客もいっぱいいたが、実のところ、何が要因で叶ったのかが断定できないところがあった。
「晶子先生、全然願いが叶いません。どういうことですか?」
顧客の小野舞というアラサー女性から電話がかかってきた。時間外でも相談に乗るが、晶子自身、うまく答えられず、メンタルブロックや前世のカルマ、波動や潜在意識のせいにしてお茶を濁すことしかできなかった。
わからない。本当は引き寄せの法則とかスピリチュアルとか。色んな顧客に接していたが、実際は運みたいなものにも見えるし、元々親が金持ちの人がさらにそうなっているだけのケースもよく見た。引き寄せの法則でいう「既にあると確信すれば叶う」。よくわからないのが本音だ。
そして今年も仕事に追われ、あっという間に一年が経過する。クリスマスも近づいてきたとき、顧客の小野舞から再び相談を受けた。
「なんか、自宅に変なクリスマスカードが届いたんです」
小野舞からクリスマスカードの画像を見せてもらうと、変なことばが書いてある。他は何の変哲もないのに。
ヘブライ人への手紙 11章1節 より
信仰は望んでいることを確信し、見えない事実を確認することである。
「な、何これ……」
画像を見ているだけで、背筋がぞくっとしてくる。身体にある何かが拒否反応を示し、胃酸が込み上げ、吐き気も止まらない。
小野舞との連絡は断ち切ったが、それでも全く効果がなく、吐き気も全く止まらず、夜は金縛にまであう始末。
『願いを叶えるため、俺と契約したよな? 神の方へ行くのは許さない!』
金縛中、そんな声も聞こえた。わからない。低い声で、本当に悪魔みたいだったが、神ってどういうこと?
身体が動かせず、息も切れるが、なぜか頭からあのクリスマスカードのことばが消えない。
「信仰は望んでいることを確信し、見えない事実を確認することである!」
自分でも意味がわからないが、あのことばを叫んだ瞬間、金縛が一瞬で解けた。吐き気もおさまり、息もできる。冷や汗は流れたが、どうにか助かった?
「どういうこと? 何なの、これ……」
その後、あのことばの真相を知った。聖書のことばらしい。
引き寄せの法則はアンチキリスト教の人たちが作ったカウンター宗教・ニューエイジだと知った。聖書から巧妙にご利益部分だけ引き抜き、神や信仰、聖書のことばを消したものだと知った。聖書でいう信仰とは「神と人との関係」で育つもの。それはスピリチュアルや引き寄せでは、ご利益目的で使っていると知り、さすがに冷めてしまった。
再び小野舞とも連絡をとると、すっかりスピリチュアルから足を洗い「願いが叶わなくて逆に良かった。自分の悪い部分もわかったから。あのまま願いが叶ってたらもっと自己中心的だったと思う」と笑っていた。その目は憑き物が落ちたように明るい。
「でも、あのクリスマスカード、何だったの?」
疑問は一つだけ残ったが、小野舞も知らないという。気になって仕方ない。
「晶子先生、誰が送ってきたが二人で探しません?」
「そうね。まずは聖書読んでみる? スピや引き寄せで意味不明だった部分、わかるかも?」
「賛成です! 真理を探求しましょう!」
こうして二人で探求が始まった。真理への探求だ。
気づくともう、願いを叶えること、成功することなど、どうでも良くなっていた。




