プロローグ
これははるか昔の物語
(それは魔国歴前20年のことだった)
世界は闇に包まれ強大な魔物たちが人間たちを滅ぼさんとしていた。
(人間と魔族が起こした大戦は大戦初期の人間勢力の失策を挽回できず魔族優勢のまま終わろうとしていた)
神はそんな人間を憐れみ、異世界から勇者をよびだし、人間を守ろうとした。
(人間勢力は、神の奇跡をまねて異世界召喚を行い。挽回しようとした)
召喚された勇者は、人間たちと協力し強大な闇に立ち向かった。
(召喚された勇者の力はすさまじく、魔族軍はたった一人に戦線を覆されていった。)
いくたびの戦いで勇者と人間たちは奮戦し、奪われた土地を取り戻していった。
(勇者の力によって魔族軍は後退を重ね、人間たちはその領土を奪い返していった)
そして人間たちはとうとう戦いで奪われた領土を全て取り戻し、魔族を元の闇の大陸に追い払った。
(勇者によって魔族軍は元々あった自国領を失い。はるか遠くの無人の大陸に逃げることになった)
勇者はその力をもって闇の大陸に封印を施し、魔族と人間互いに行き来できないようにすると、後のことを教会や国に託して、異世界に帰っていきました。
(大陸に逃げた魔族たちは、全てを失い。もはやこれまでかと思った時、一人の人間が人間の国からこちらにやってきた)
人間たちは平和になった世界で、幸せに暮らすことになりました。めでたしめでたし
(その人間は勇者の力を使って人間と魔族の大陸の間に結界をはると、魔族たちに宣言しました)
(私は人間に騙され、元の世界に帰ることもできなくなった勇者である。と)
第22代教皇著 異世界の勇者の物語より抜粋 /(魔国歴963年度教科書 魔国史Ⅰ「魔国建国物語」より抜粋)
これはそんな世界が再び合わさる物語
プロローグ
魔国王にして勇者の子孫、グラバルト・キョウジュ・カシワギ・ルータルは頭を抱えていた。
「なんで自分の代で封印がとけるんだよ・・・もう100年ぐらいがんばってくれよ」
正確に言えばまだ封印はとかれていない。だが、調査隊の報告によって結界が明らかに弱まっていることが確認されており、もって40年だということが判明してしまったのである。
「・・・・・まあ、とけるのはしかたない。とりあえずは予定通り軍備を整えないといけないな・・・人間が攻めてくる可能性もあるし、祖先が代々つむいできた軍備拡張政策をやらないと・・・やだなぁ・・・」
手元の資料を見る。 そこには十数代前の初代魔王が残し、代々の魔王たちが引き継いできた研究資料がある。
「とりあえずは戦艦と空母、巡洋艦に駆逐艦。 航空機に戦車・・・初代様の世界の兵器、試作は何代も前に成功してるし・・・量産すればどうにかなるかな・・・でも人間たちもたぶん似たようなもの作ってる可能性もあるし・・・怖いなぁ・・・敵がわからないって・・・とにかく最大限準備しておかなきゃ」
敵もおらず、ほぼ形骸化した軍隊を再編成し、戦争できる状態に持っていく。最悪の事態を避けるために
魔王は知らなかった。
人間世界がいまだに冒険者はびこるファンタジー世界だということを・・・・
「封印が弱まっているだと?」
教皇ルーファス・フォン・インテフェリスはそういって眉をひそめた。
「はい、冒険者ギルド、イルド王国、辺境教会、三つの組織から報告が上がっており、ほぼ事実であると思われます。おそらく数十年のうちには封印はとけると・・・」
配下の聖騎士団の長が答える。その顔は苦渋に満ちている。
「・・・むう、まさか私の代でこんなことになるとはな」
そういってルーファスは小さく溜息を吐く。
「各国に通達をおこない魔族の侵攻に対して準備、協力するように要請しろ、おそらくあまり期待はできないが、魔族大陸に近い国々は連携するだろう・・・それから、各教会の代表にも、準備をするように、特別予算を組む。聖騎士団も増員し準備するように、造船所で大型帆船の建造を、魔族を海岸線で止められればそれに越したことはない。あと軍馬と食糧の増産、できる限り準備をするように、それから魔法剣や魔防具の制作、ワイバーン騎士団も増員しないと・・・・・・各国も動いてくれるように説得も行わないといかんな・・・勇者召喚も視野に入れて準備しないと・・・・」
教皇ルーファスは無能ではない。むしろ歴代教皇の中では優秀であり、敬遠な信徒であり、人々を守るために全力を尽くせる人間である。
だが、教皇は知らなかった。
既にもう取り返しがつかないほど、絶望的な戦力差があるということを・・・・