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メイドと彼女どっちが好きなの?~専属メイドとの同棲生活~  作者: 四志・零御・フォーファウンド
同棲メイド生活編①・・・とある友人の邂逅と融合・・・
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舞桜が楽しい大学生活

識人ではないが、常人ではないと明言しておく。頭のネジが数本外れていると表現するのが最適かもしれない。うん、イカれたドラえもんだ。


 それはドラえもんに失礼か。


「マミコ、今日ウチに来なよ」


「私の名前は真実まみだって。何回言ったら覚えてくれるの?」


「おっけー。じゃあ講義終わったら待ってるわ」


「人の話を聞いて!」


 舞桜は大学の入学式で偶然知り合った関係だ。――いや、懐かれたと言った方が正しい。


 見た目は美女。中身は核弾頭。彼女の気分次第で周辺は爆心地へと様変わりする。出来るならば関わりたくない人物ではあるものの、彼女には人を惹きつける素質がある。


 言葉? 見た目? 好奇心溢れる眼差し? それが何かは未だにわからない。


「おっつー、マミコ」


 退屈な講義が終わると、本当に舞桜が待っていた。


「ずっと待ってたの?」


「ああ」


「90分もここで待ってたわけ?」


「勿論」


「何して待ってたの?」


「お経を2セット近く」


「えぇ……」


 本当に意味が分からない。だが、彼女を理解しようとするだけ時間の無駄なことはすでに知っている。この境地に辿り着くまで半年は掛かった。


「じゃあウチ行こうぜ」


「行くとは一言も言ってない」


「この後暇なのは知ってるぜ」


「わかったわよ……」


 舞桜の恐ろしいところは人のスケジュールを完璧に記憶しているところだ。どの講義を受けているか、何時から始まるのか、バイトのシフトだって完璧に把握している。出会ったばかりの頃は人のスケジュール帳を勝手に覗いているのではないかと疑ったぐらいだ。


 しかし、どうやら人伝いに予定を聞き出して把握しているらしい。それがわかる人脈が恐ろしいし、断片的に得た情報からスケジュールを把握するのは異常と言って良い。


「そういえば、引っ越したんだよね?」


「ああ、3LDKの良いトコだぜ」


「姉妹で暮らしてるんだっけ?」


「それとガク様」


「ガク様?」


「妹のあるじだ」


「あ、あるじ?」


「だってメイドだもの」


「妹ってメイドなの!?」


「え、言ってなかったか。ついでにアタシもだけど」


 情報量の多さに理解が追い付かない。いつも突拍子でふざけたことを言っているのでどれが冗談か判断がつかない。いくつか嘘をついても、ひとつだけ本当のことを言っていることもあるのが舞桜なのだ。

 

「ははー、妹はまだしも、舞桜は嘘でしょ」


「……まぁ、ウチにくりゃわかるさ」


 電車で一駅乗り換えがあり20分。そこから徒歩5分。見上げ過ぎて後ろにひっくり返りそうなほど、巨大なコンクリートの摩天楼に足が震えた。


「あ、あんた、タワマンに住んでるの?」


「悪いか?」


「悪いとかそういうことじゃなくて……」


 メイドをやっていればタワマンに住めるのだろうか。時給はおいくら? もはや時給じゃないのか。年棒制だったりします??? ……将来メイドになろうかな。


「ただいま~」


「お邪魔します」


 耳が痛くなる速度で上昇するエレベーター運ばれやって来たのは、三十階にある一室だった。


「おかえりなさい」


 廊下からメイド姿の少女が顔を覗かせた。私の存在に気づくと一度顔を引っ込めると改めて姿を現した。


「お姉様のご友人ですか?」


「マミコだ」


「違います真実と言います」


「珠李です。お姉様の奇行に疲労困憊していると思いますので、どうぞリビングでゆっくりなさってください」


「あ、おかまいなく……」


 やはり狂気は自宅でも健在らしい。彼女も苦労していそうだ。だが、そんなことよりも衝撃を受けたのは本当に舞桜の妹がメイドをしていることだ。


「えーっと、珠李ちゃん」


「なんでしょうか?」


「あなたのお姉さんはメイドなの?」


「はい。疑う気持ちも良くわかりますが、メイドをしています」


「そう、なんだぁ……」


「とは言っても、現在のメイド業務のほとんどは私がしているので名ばかりのメイドです」


 こんなにしっかりとした妹がいながら姉はこんななのか。いや逆か。姉があんな

のだから妹がしっかりしたのだろう。


「ご主人様を連れてきます。しばしお待ちを」


 リビングに繋がる扉を軽くノックして部屋に入っていく。


「失礼しますご主人様。お客様です」


「舞桜の友達なら僕が挨拶する必要——いてててぇ! わかった! 行くから! 手を離して! いっててててて!」


 澄ました顔の珠李が出てきた。その後に続いてボサボサ髪の男が現れる。寝起きだろうか。


「あ、ども。冠城学です。えーーっと、どちら様ですか?」


「こんにちは、私は舞桜の友達でま——」


「ようガク様! こいつはマミコだ。よろしくな!」


真実まみです!」


 やり取りを眺めていた学は目に薄っすらと涙を浮かべた。


「どうしたんですか!?」


「……苦労しているのがひしひしと伝わってきます。数少ない理解者が出来てとても嬉しいです」


 握手を求められたので手を差し出すと両手でブンブンと腕を振られた。


「な、なるほど。それは私も嬉しい限りです」


 ご主人様というのは私よりもかなり苦労しているようだ。




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