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バーチャルな存在4

「今日もありがとうございました~。また明日~」


 画面に向かって挨拶すると配信ボタンを押して配信を終了する。


「……はぁー」


 いつの間にかチャンネル登録者数は50万人を突破していた。予想外の事態。懸念していた事態が訪れようとしていた。


 それは昨日の夕食でのことだ。


 今日の献立は火恋の要望に応えてハンバーグ。上機嫌で頬張っていると、翔和が神妙な面持ちで椅子に座った。


「なぁ火恋」


「なにさ」


「ぶいちゅーばー、ってやつ知ってるか?」


「っぐぅ!」


 食べかけのハンバーグが喉に詰まってしまう。慌てて水を飲んでどうにか窒息死を免れる。


「どうした!大丈夫か?」


「えぇ、何でもないわよ。大したことないわ。それで、なんだっけ?」


「ぶいちゅーばー」


 間違いない、彼は確実に一歩、私のしていることに近づこうとしている。


「なにそれー」


「火恋ならネットに詳しいから知ってると思ったんだけどなー」


「私にだって知らないことはあるわよー。ネットは大海原のような大草原が宇宙の彼方まで広がっているのよー」


「意味は分かるけど意味わからないこと言ってない?」


 問題は、Vtuberと言う存在をどこまで理解しているかだ。まだ存在だけを知っている程度であれば、私の存在を認識せずに引っ張り戻せる。


「まあいっか。いま話題になってるのが火ノ前(ひのまえ)蓮華れんげって子なんだけど」


「ぶっは!!!」


「どうした火恋!?」


「な、何でもないわよ……」


 問題ありだ。火ノ前蓮華はVtuberとして活動している時のキャラネームだ。


「その子の配信を見てるわけ?」


「いいや、今日友達に勧められたから見てみようと――」


「見ないで」


「なんで?」


「絶対に見ないでぇ……」


「そんなに言うなら見ないよ」


 疑問を浮かべた表情をしながらも、見ないと言ってくれたのでひとまず安心する。


「ふぅ、ありがと。そのままインターネットから離れてくれるともっと助かるわ」


「なんでアナログ化しなきゃならんの。インターネットぐらい使わせてくれ」


「仕方がないわね。一日一時間限定よ」


「ゲームじゃあるまいし。一日一時間はこのご時世不便だ。……まさか、ぶいちゅーばーとやらをやっているんじゃないか?」


「っ! そ、そおおおんなわけないじゃない!」


「図星でしょ」


「…………その通りです」


 見破られてしまっては認めるしかない。


「それで、何でそんなことやってるわけ」


「翔和は、その、Vtuberやってることが不満なの?」


「別に不満があるわけじゃないよ。自分が楽しんでやっているならいいんじゃないか。そもそも見たことがないから何とも言えないけど」


「そ、そうなのね」


 まだ見られてないのが救いだ。もし見てしまったらこんな反応はしないだろう。すぐにやめろと言うだろう。何も知らない一般人からすれば、見てていたたまれない酷い配信をしている。逆に、それが視聴者を増やす要因になっていることも理解している。


「とにかく、私の配信は絶対見ないでよね。あと、勝手に部屋に入らないこと」


「……はい」


 翔和が同意したことを確認して私は自室に戻った。




     *




「と、いうわけで~! 重大発表は3D化でした~! 詳細は後日発表するので各自確認してくださいね。それじゃ、最後に今日のウルトラチャットを読み上げていくわね」


 チャンネル登録者数50万人の記念として3D化することになった。3Dの身体を手に入れると何十万の大金が飛ぶ。それに見合う価値があるのだから仕方が無い。これは更なる高みへと上り詰める為の必要経費。自己投資――そう思っていないとやってられない金額である。


「家政婦のハタケさん『3D化おめでとう代』ありがとう!」


 何かしらの発表があればウルトラチャットが飛んできて、資金回収を行える。


「♰片翼の天使♰さん『神はいつもみている』よくわからないけど、ありがとう!」


 今日の配信で3D化に伴う資金は全額回収できたはずだ。これでもお釣りがでるほどだ。


「同居中のお兄さん『おめでとう。夕食出来たから下に降りてきなさい』……。あ、ありがとう。――これが最後のウルトラチャットみたいね。それじゃあ、今日もご視聴ありがとうございました! ばいば~~い」



――その後の夕食で何が起きたのか。知る者は二人しかいない。


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