バーチャルな存在
いつも通り、栞と会話をしながら作業をしていると、何やら彼女が騒ぎ出した。
「あーっ!!!」
「どうしたの?」
「火恋、大変よ!」
「……なに?」
「伝説のMMORPGであるアマテラスオンラインの正統続編、アマテラスオンライン2が正式サービス開始だわ!」
「は?」
何を言い出したかと思えば、新作オンライゲームの話だった。
「火恋、あんたもやるわよ!」
「なんでそんなゲームやらなきゃいけないのよ」
「これもお兄さんを守る為よ」
「絶対関係ないじゃない。そんなことよりお腹が空いたわ。ご飯探してくるわ」
「えー、やらないのー?」
そんな彼女の声を無視してヘッドフォンを外す。身体を伸ばしてからスマートフォンを持って自室をでた。
「なーに食べよっかなー」
階段を下りながら昼食のことを考える。いつもレトルトカレーが常備してあるのでそれを食べているのだが、そんなことを数カ月も続けていたらさすがに飽きてきた。
「そうだ」
最近流行っているという食品デリバリーサービスを試してみようと考えた。スマートフォンにアプリをインストールし、アプリを起動。食べたいものを選択してお金を払えば、自宅まで食品を届けてくれる引きこもりにはとても嬉しいサービスだ。
早速アプリをダウンロードする。初期設定を諸々打ち込んだら後は食品を選ぶ。
「久しぶりにジャンクなものが食べたいわ」
火恋は食品ジャンル内の「ファストフード」を選択する。すると、自宅10km範囲内のファストフード店が表示された。
「あったわねバーガークイーン」
バーガークイーンはアメリカにもあった大手ファストフード店だ。この店のバーガーは火恋のお気に入りだった。
火恋はスーパービッグバーガーなるものを選択する。スーパービッグバーガーはバーガークイーンの中で人気度1位を誇る有名なバーガーだ。チリソースがふんだんににかけられたビーフに、巨大なパティで挟まれた造形は誰もが息を呑む。
「ん、5分で到着するの? 早いわね」
テレビをつけて5分の暇を潰す。チャンネルを回すが、この時間はあまり面白い番組はやっていなかった。
「こんなんじゃ、ネットの動画サイトに顧客をとられるわよ」
なんて独り言をしていると、玄関のチャイムが鳴った。玄関の映像を確認すると黄色の制服を着た長髪の男が立っていた
『こんにちは、キンラーイーツです』
「はーい」
急いで玄関に向かって注文していた品を受け取る。
「またのご利用お待ちしております」
男はぶっきら棒に挨拶して帰って行った。
「……怪しい男ね」
こういった宅配サービスで、宅配に来た人とトラブルになった話がネットで散見される。今後は用心しておくことにしよう。




