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メイドと彼女どっちが好きなの?~専属メイドとの同棲生活~  作者: 四志・零御・フォーファウンド
同棲メイド生活編③・・・もうひとりのメイド・・・
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頴川家へようこそ


「キミが冠城のメイドか」


 お屋敷というよりは、豪邸に招かれたと形容するべきだろう。


 最後の晩餐に出てくるような長机の先に、メイドを従えた女性が座っていた。彼女こそ超常現象検証部の部長であり、学園内でも屈指の知名度を誇る【女帝】こと頴川えがわ昴流すばるだ。


 珠李は恐る恐る彼女に対して一礼する。


「冠城学の専属メイドを務めています。犬星珠李です。しばしの間、この屋敷にて奉仕させて頂きます。どうぞ、よろしくお願いいたします。」


「ようこそ、頴川家へ……と言っても面白いものは何もないがね」


 そう言って、珍しいモノを見るように珠李のことまじまじと見つめる。


「十文字には話を聞いたが、本当にいいのか?」


「いいとは?」


「主人をほっらかしでこんな所に来る意味はあるのか、と聞いているんだ」


「正直に答えますが、分かりません。学様のメイドとしての責務を果たすのであればここに来るべきではありませんでした。ですが、学様の成長の為、一時的に傍らを離れるのも悪いことではないと思っています」


「ふむ、主人である身からすれば悪くない回答だ。十文字はどう思う?」


「ノーコメントや」


「彼女は納得いかないらしいな」


「ノーコメントって言っとるやないか!」


「わかった、わかったよ。メイドとしての能力を向上させる為に頴川家にやって来た、そういう認識で問題ないか?」


「さようでございます」


「ならば、十文字の元で初めからメイドとしての仕事を学ぶといい」


「ほな、しゃあない。早速始めるさかい。しっかり付いてきいや」


「かしこまりました」




     *




「なかなか腕がええんちゃうか?」


 まずは手始めに昴流の部屋の掃除だった。期間限定メイドが頴川家次期当主の部屋に入っていいのか抵抗があったのだが、昴流は「気にするな」と言ってすんなり通された。


 部屋の大きさは20畳程度だろうか。壁の一面には小難しい本が並んだ大きな棚が設置してある。反対側にはシンプルでいて高級感溢れるデザインの机と椅子。奥にはキングサイズのベッドが置いてある。その他に設置しているものは何もない。年頃の女の子らしさ皆無。無駄を極限まで省いた【女帝】らしい部屋だった。


「恐縮です」


「ほな、次は廊下の窓を拭こうか」


「かしこまりました」


 掃除用具を抱えて昴流の部屋を出る。


「雇って正解やわ。手際がええ」


「恐縮です」


「硬いなぁ。ほんまに言っとるで。世辞で言っとるんちゃうがな。さすがは名立たる犬星のメイドやて褒めとるんや」


「犬星の名前は有名なのでしょうか?」


「はぁ? 自分の家のこと知らんのか?」


「自らの家柄など気にしたこともありません。冠城家への従順たる奉仕。それだけを教えられていましたので」


「なんやそれ。ほな、アタシが聞いた犬星の話を教えたるわ」


 十文字は長い廊下の窓を拭き始める。珠李も倣って隣の窓を拭く。全部拭き終えるには、かなり時間がかかりそうだ。だが、珠李には大屋敷での経験がある。この廊下も大屋敷の廊下と同じぐらいの長さのようで、さほど苦にはならないはず。


「元々、戦国の世で織田家に忍として仕えていた家系が犬星家の大元と言われとるらしいわ。本能寺の変が起きた後は、豊臣、徳川へと戦国の勝者に流れて安泰。その後、忍業は廃れていき商会として力を付けていた冠城の警護として傘下へ下ったらしいな。その頃の冠城は何を警戒しとったんか知らんが、かの有名な服部半蔵や、風魔小太郎を招き入れたらしいわ。変わり種で石川五右衛門なんかも関係があったとか無かったとか」


「絶妙に信憑性が薄い話ですね。オカルト雑誌の記事ですか?」


「まぁ、アレや。ロスチャイルド家云々とかと一緒やろ。冠城家っちゅうとこは力を持った家系や。そんな家系に仕えとる家系もまた、変な噂が湧いて出るやろ」


「そうですか」


「さて、雑談はここで終いにせえへんと終わらんな」


「そうですね。ところで、私達以外のメイドはどこにいらっしゃるのですか?」


「あー、そんなもんおらへんな」


「……なんと?」


「おらへん言うとるがな」


「……この規模を十文字様1人で管理しているのですか?」


「正確にはちゃうけど、実質1人やな。1人で全てをこなす裏ワザがあるんやけど、人様に見せられんのや」


「なるほど……?」


「そない細かい事は気にせんといて! じゃんじゃん進めよか!」


「か、かしこまりました」


 結局、全ての掃除が終わる頃には陽は傾き、外ではカラスが鳴いていた。


「ひぃー随分かかったわ。まぁウチはこんな感じやけど、やれそか?」


「勿論でございます十文字様」


「……なぁ、『十文字様』はやめえや。薫って呼んでや」


「かしこまりました薫様」


「なんでやねん! 『様』って付けるのをやめえって言っとるんや!」


「なるほど。ですが、私よりも年上でございますのでここは『様』と呼ぶのがよろしいかと」


「ええねんそんなこと。年も1つしか変わらへんし。あーしも珠李って呼び捨てにするさかい、薫って呼んでや~」


 珠李はしばらく考え込むと、渋々と言わんばかりにゆっくりと頷いた。


「かしこまりました、薫」


「そやそや、それでええ! 改めてよろしくな、珠李! ちゅーわけで、今日最後の仕事すんでぇ!」


「最後の仕事ですか?」


「せや。まずは場所を変えよか。離れにある武道場に向かうで?」


「武道場の掃除ですか?」


「今日の掃除は終わっとる。武道場でやることは1つしかないやろ?」


「何でしょうか?」


 珠李の問いに、十文字はニヤニヤしてから手に持っていたモップを珠李の前に突き出した。


「……手合わせ願いますわ」



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