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狂気的クッキング


「料理なんてテキト~にやれば出来るさ」


 教室に入って以降、無言を貫いていた紡は、コーヒーを作りながらぶっきら棒で語り始めた。


 理科室には紡と珠李の2人だけ。


 学は広世と共に用事があるそうで、珠李は1人で理科室に来たのだ。いつもなら手芸部に寄ってから化学部に来るのだが、今日は前川さんの私用により休日。寄り道せずに化学部へ行くことになった。


 理科室に到着すると同時に、紡も教室に入って来た。


 紡は、いつも何をしているのか分からないが、放課後にやって来る時間はいつもまばらで、最初からいる時もあれば帰り際になってようやく姿を見ることもある。


 そんな偶然が重なり、世にも珍しい組み合わせが誕生してしまったのである。


「偏りが起きなければ大抵の料理は料理としての体を保つ。そもそも、料理の概念を知りたいね。カップ麺にお湯を注ぐことは料理じゃないのか? だめ? それじゃあ、ゆで卵を茹でるのは料理だと思いたいね」


「その言いようだと、料理が苦手のように見受けられます」


「いいや、得意さ。コーヒーだって自分で作れる」


「それもお湯を注いでいるだけです。料理ではありません」


「いいや、違うぞメイドちゃん。コーヒーだって淹れ方ひとつで香りが変わる、奥のふかーい料理さ」


「そうなんですか」


「あれ? これは偏見なんだけどさ、メイドって職業柄、コーヒーとか紅茶を淹れるの得意なんじゃないの?」


「学様がどちらも嗜まれないので、私にはその知識はありませんし、教えられることはなかったです。お姉様なら出来るでしょうが、少なくとも、冠城家ではメイドによって得手不得手があるはずです」


「なるほど。珠李ちゃんのお姉さんか。是非一度会ってみたいもんだね」


「残念ながらそれは難しいかと」


「どうしてだい?」


「学様に何があっても紡様とお姉様を引き合わせるなと仰せつかっております」


「んー、それは悲しいね。キミのお姉さんと話す機会があればとても素晴らしいインスピレーションが浮かぶ気がするんだけどなぁ」


「それを危惧しているのですよ」


「うん、ますます会いたくなってきた」


 それだけは絶対に阻止する。学からの指示は絶対だ。珠李個人的にも阻止するつもりだ。

 

「話を戻すけど、メイドちゃんはどこからを料理と定義しているのさ」


「切る、焼く、そして味を整えれば料理だと思います」


「コーヒーだって、擦る、温める、味の調整にミルクや砂糖を入れる。これは立派な料理だよ」


「暴論です」


「暴論で結構さ。これだから料理の出来る人は……」


 紡はやれやれと言って出来上がった珈琲を啜る。


「そこまで言うのなら、ここで料理をしてみたまえ」


「構いませんが、食材はあるのですか?」


「勿論あるともさ」


 紡は準備室に行くと、奥のガラス棚の前で立ち止まり、その場でしゃがんで下にある金属製の扉を開けた。


「ほら、冷蔵庫だ」


「……なんでこんなところに冷蔵庫があるんですか」


 学にも隠された冷蔵庫の存在は聞いていなかった。むしろ、彼も知らないのではなかろうか。


「ボクの居心地の良い場所を作る為に、裏で色々と努力をしているのさ」


「先生に後で報告しておきます」


「紅ちゃんも公認さ」


「…………」


 もはや何も言えなかった。紡にかかれば教師であれど傀儡と化すのか。珠李の中で紡に対する警戒度がほんの少しだけあがった。


「さて、何を作る? あるのはねぇ、卵、豆腐、鶏肉、玉ねぎだね」


「消費期限は大丈夫なんですか?」


「鶏肉は今日までだね。それ以外は明日まで」


「どうして料理が出来ないのに食材を買っているのですか……」


「さぁね」


 もしや、珠李と2人きりになるのを見越して食材を用意していたのか疑ってしまう。だが、さすがにそこまでの用意周到さはないはずだ。……無いと思いたい。


「さて、これだけの材料で料理は作れるのかな?」


「わかりました。簡単なモノですが料理を作りましょう」


「何を作るんだい?」


「…………結賀崎紡のソテーでございます」


「ひっ、ヒィ! ぼぉ、ボクが悪かった。コーヒーは料理じゃない!」


 


——その後、珠李はあり合わせの材料で紡に料理を振る舞ってあげたとかあげてないとか。


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