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お邪魔します

「お嬢様、やはり突然の訪問は学様のご迷惑かと」


「アタシが来るんだから迷惑なわけがないでしょ!それに、変な女がガッ君にくっ付いていたら追い払わなきゃいけないわ」


「大丈夫ですよ。犬星姉妹も一緒に住んでいるんですから」


「アイツらこそ信用ならないわよ。特に妹の方!」


「珠李様ですか。あの御方は優秀なメイドではありませんか」


「この前会った時、ガッ君に色目使ってたのよ。女の顔しやがって! うぅ! 今思い出しただけでも反吐が出そうだわ!」


「レディがそんな下品な言葉を使わないでください」


 エントランスに来た2人は、自動ドアのオートロックに阻まれた。部屋番号を押して入居者に開けて貰えばいいだけだが、ノアはそうもいかなかった。


「突撃するわよ」


「はい?」


 ノアは部屋番号を入力せずに9から始まる番号いくつか押していく。


「何しているんですか?」


「オートロックの解除よ。住人に許可貰わなくてもオートロックを解除するコードってのが存在しているのよ」


「どうしてその番号を知っているのですか」


「この建物、露峰が管理しているからよ」


「……なるほど」


 瀬葉須が引き気味に頷くとオートロックが解除された。


 露峰で物件を管理しているとは言え、無断で建物に侵入するのはいかがなものか。


「行くわよ」


 ノアは瀬葉須の腕を引っ張り、自動ドアを抜ける。その後はタイミング良く1階に到着したエレベーターに乗って目的階のボタンを押す。最新式のエレベーターは15秒程度上昇を続けて、ゆっくりと停止した。


 こうして目的地である部屋に辿り着いたが、扉の前で立ち止まるを得なかった。


「どうしたんですか、お嬢様?」


「いま気づいたけど、いきなり部屋の前にいたら怖いわね」


「今更、何を言っているのですか?」


「いっ、いざ乗り込もうと思ったら恥ずかしくなったの!」


「そんなこと言っても仕方がないですよ」


 瀬葉須は問答無用でインターホンを鳴らした。


「ちょっと!」


「…………何故止めるのですか」


「心の準備ってのが必要なのよ!―—服装変じゃない? 前髪は大丈夫かしら?」


「それも、今更どうしようもないことですよまったく」


 人の気配を扉越しに感じて、ノアは自然と背筋が伸びる。


 だが、扉を開けたのは予想外の人物だった。


「……いらっしゃいませノア様。お久しぶりです」


 出てきたのは学ではなく、冷徹な妹メイドの珠李だった。飛んだ肩透かしだ。伸ばした背筋も曲がってしまった。


「ちょっと、どうしてあなたが出てくるのよ」


 不満げに睨むと珠李は口をへの字に曲げた。


「何ですか。ここは私たちの家なので私が出て来るのは当然のことです」


「そんなの知らないわよ! ガッ君に用事があるの!」


「ご主人様なら友人と勉学に励まれていますが」


「友達って女?」


「両手に華です。流石ですねご主人様は」


「もぉ! どーして女を連れ込んでるのよ! ガッ君に這い寄るメス猫は追い払っておきなさいよ!」


「―—まったく、何の騒ぎだよ」


 女の後ろからぬるっと出てきたのは今度こそ学だった。


「ガッ君!」


「ノア、久しぶりだな。一体何があったんだ?」


「何があったじゃないわよ! アタシが居ない間に色々起こりすぎなのよ!」


「分かったよ。ここじゃ近所迷惑だから中に入ろうな。瀬葉須さんもお久しぶりです」


「ご無沙汰しております、学様。お嬢様が騒がしくて申し訳ございません」


「いつものことですから」


 そう言って、学は2人を家の中に上げる。


「お邪魔しまーす」


「お邪魔いたします」


 廊下の突き当りにあるドアを開けるとリビングに繋がった。そこには見知らぬ女子高生と男子高校生が座っていた。珠李の発言は冗談だったらしく、片手に華で少し安心した。


 だが、女がいた事実に変わりはない。


「誰よ、その女!」


「……こっちの台詞よ失礼な人ね。私の名前は安良岡歌弥。よろしく」


 やられた。美少女だ。しかも、芸能界にいてもおかしくないレベル。不本意ながらメイドが猫避けになっていると思っていたが、期待外れのようだ。


「えっ、あ、よろしくお願いします。――じゃなくて! どうしてガッ君の家にいるのよ!」


「お呼ばれしました」


「なんでよ!」


「冠城くんが勉強を教えてくれるからよ」


「そんなの――」


「冠城くんって、とっても教えるのが上手いですよね」


「あー分かるわ。アタシも中学受験の時に教えて貰ったけど、説明も丁寧で――じゃなくて! アナタはガッ君とどういった関係なの!?」


「クラスメイトよ。それよりあなたも名乗りなさい失礼でしょ」


「は、はい、すみませんでした。アタシは露峰ノア。ガッ君とは将来を誓い合った仲よ」


「許嫁ってやつかしら?」


「はい!」


「違う!」


 学が慌てて止めに入る。否定しなくてもいいのに。


「ノアは俺の血筋の関係者で、資本提携をしたー、そのー、まぁ……、遠い親戚ってところだよ。将来を誓い合ってないからな!」


「誓い合ったもん!」


「何年も前のことを覚えてやがって。そりゃなしだろ!」


「アタシは諦めないもんね。ガッ君の為に転校だってするつもりだし」


「正気かよ……」


「学様、恐れ入りますがお嬢様を止めていただけませんか。今回はこの件で訪れたも当然。本当にノア様が転校されたら私の立場がなくなってしまいます」


「瀬葉須は黙ってなさい! あなたには元々立場などないでしょう」


「相変わらず、瀬葉須さんにひでぇ言いようだな」


 瀬葉須が困惑した表情で目を泳がせている。


「とにかく、夏休み明けにはそっちの学校に行く予定でいるから、ガッ君はそのつもりでいてね。アタシが行くまでアタシ以外の女とのコミュニケーションは禁止!」


「おいおい、そりゃ無理な話だぜ」


 そう言ったのは、学たちと同じ制服を着た男子。


「……なんなのよ、モブ男」


「お? おいおい、俺の名前は広世裕紀。ガクとは深い、そりゃマリアナ海溝にまで届きそうになるまでふかーい関係の者だ」


「ただのクラスメイトだ」


 裕紀は学のツッコミに一瞥しただけでそのまま続ける。


「ガクはな、クラスの女子からモテまくりなんだ」


「も、モテまくりぃぃぃ!?」


「この『姫君』さんも学に惚れこんでるんだぜ」


「アタシという存在がありながら、どうして浮気するのよ!」


「冠城君、この生意気な小娘とどういう関係なの?」


「学様、勉強に集中するために全員排除しましょうか?」


 拗れた関係の中心に立つ学は、ただ茫然と立ち尽くすしかない。



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