03.校長高校生
今日もいつものように朝が来る。
眠くて起きるのが億劫になる。安らかに眠らせてくれ、という俺の希望も儚く、スマホのアラームは獰猛な野生動物のように吠えはじめるのだ。
セットしたのは紛れもない俺なのだが。アラーム音が聴こえるたびふざけんな、と心の底から願ってしまう。人間という者は本当適当な生き物であることを再度実感する。
しかし、学校に行かなくてはならないので仕方なく身を起こすのだ。
朝ごはんを食べ、歯を磨き、制服に着替えて、今日もいつものように自分が通う公立超衣替高等学校へと向かうのだ。
通学路は一日中人通りが少ないため、深夜に傷害事件や誘拐事件がこの辺りで多発する。犯罪を行いやすい道なのだ。だから夜中はなるべく避けて通る。
そんな事はどうでもいい。
とりあえず俺に何か刺激を与えてほしかった。天地がひっくり返るような話が入ってこないか、そうポワポワと雲のように頭上に浮かばせていた。
そして学校に着いたとき、それは起きてしまった。
「俺が校長先生・・・・・・?」
自分でも言っている意味が分からないのだが、目の前にいる生徒会長がそう言っているから疑問形で反芻しただけだ。
「そうです。今日からあなたが校長先生です。どうかよろしくお願いします」
「いや、よろしくも何も俺は一生徒なんだが」
「そうですね。よろしくお願いします」
「お前の耳は筒抜けか!?」
「・・・・・・これには深い訳がありまして。どうか、事情を察して頂いて今日から校長先生として使命を全うして頂けませんか・・・・・・?」
「やだね。そんな突拍子もない事言われて、はいそうですねって言えるか! 俺はこの学校の生徒として青春を過ごすよ!」
生徒会長は一瞬残念そうな顔をしたが、最終手段と言わんばかりに決意を固めた顔をして耳元で囁いてきた。
「校長先生になれば、夏の服装は女子生徒上半身体操服と下半身ブルマのみとか、座学の授業では旧式スクール水着での強制参加とか、学校の規則も思いのままですよ」
「よし、なろう。任せなさい」
俺は校長先生になった。




