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ジョングルール漫遊記  作者: 小山 静
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9

 


 薄ら気付いていたがあんまり友好的とは言えない態度を取られ、俺は戸惑ってしまう。


「...何のというか、冒険者登録に...?あと、俺、勇者じゃ無いです...。」

「.............は?」

「...えっ?」

「...ん?」

「「...........」」


 お互いの頭の上にハテナマークが浮かぶ。

 俺は多分普通のことを言ったつもりだが、どうにも相手にとっては違うように感じる。

 微妙な空気が部屋を漂う。

 目の前の(あか)い髪ゴリマッチョは一つ咳払いをして居住いを正した。


「あー、その。悪かったな。話しもよく聞かずに殺気まで飛ばしちまって。」

「いえ、こちらこそお騒がせしてすみません。」


 ぽりぽりと頭をかくゴリマッチョ。


 ――殺気を出してたのか、全く分からなかった。


 俺は外で襲われたら秒で死ぬかも知れない。


「改めて、俺はこのリムサッカ冒険者ギルド王都支部のギルドマスター、ゲオルグだ。よろしく。あと、ギルド内では敬語じゃなくても良いぞ。」


 敬語じゃなくて良いなんて気楽で助かる。


「俺はユーリだ、よろしく。さっきも言ったように冒険者登録したいんだが?」

「その前に一つ聞いて良いか?」


 おそらく勇者の事だろう。


「黒目黒髪は勇者の色だ。ユーリは勇者じゃねぇって言ってるが、どういう事だ?」


 やはり見分け方は黒目黒髪のようだ。亜玲空(アレク)は日本人だが生まれつき茶色の髪をしている。俺のように目立つことは無いだろう。


 ――いや、二人黒髪連れてたら目立つか?


 俺は召喚の事、そして低すぎるステータスのことをゲオルグに話した。


「....確かに低いな。異常なくらいだ。」

「そうですか...。」


 やはりこれはこれで異常な様だ。チートとは真反対だが。


「あと、人にほいほいステータスを見せるもんじゃねぇ。普通口頭で答えるか、紙に書くかのどっちかだ。」


 あれ?城の人たちは普通に見せろって言ってたが、そういえば逆に見せてもらった事は無いような気がする。

 やはり飛鳥(アスカ)の言っていた通り、奴らは信用できないかも知れない。


「....ユーリは常識に(うと)すぎるな。まぁ、来て一ヶ月な上、訓練漬けじゃぁ学ぶ機会なんざ無いか。」


 ゲオルグが独り言の様に呟く。言われた通りこちらの常識は全く分からない。城の外に出たのも今日が初めてなのだ。

 ちょっと待ってろ、そう言ってゲオルグは席を外した。

 戻ってきたゲオルグの手には小さいピアスがあった。


「こいつは『変装のピアス』だ。着けると髪と目の色が変わる。こいつをやるから付けとけ。お前の髪は目立ち過ぎる。」


 そう言って渡された星型ピアスを俺は手のひらに乗せて眺めた。


 付けとけって...


「俺、ピアスの穴、開いてないんだが?」

「............」


 俺の学校はピアスは校則違反だった。当然、穴なんて開いてない。

 結局ゲオルグに開けて貰った。

 ピアス用の針なんてこの世界には無く。普通の裁縫用の縫い針を刺された。めちゃくちゃ痛い。

 そこに試験管の様なものに入った液(回復薬だそう)をかけ、針を抜き取れば綺麗なピアスの穴が完成した。

 液の残りは飲まされた。すげぇ苦い。

 傷口が膿んだりしない様に予防の意味があるそうだ。

 そして早速ピアスを付けた。

 鏡が無いため、何色になったのかわからないが変装は出来たらしく、ゲオルグは満足そうにうなづいている。


「耳は隠しとけよ?そのピアスの形は特徴的で有名だからな。不審に思われるかもしれん。」

「ありがとう。このピアスの代金はいくらなんだ?」


 国王様がくれたのは金貨が数枚入った袋だ。当然買い物なんてしてない俺には相場がわからない。

 あまりに高級なものだと払えない可能性があった。


「そいつは俺のコレクション品だ。無料(タダ)でやるよ。その代わり、貸一つだ。」


 お前に貸を売っておくのは面白そうだ、と笑っている。

 こっちは面白くない。無料(タダ)より高い物はないのだ。


「冒険者登録だったな。書類を持って来させる。俺は忙しいから、なんかあったら呼べば良い。」


 じゃあな、と言ってゲオルグが出ていき、入れ替わるようにさっき案内してくれた受付嬢が現れた。


「手続きはカウンターでしますので、移動お願いします。」



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