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日も傾き始める午後、ようやく俺はギルドに着いた。
途中何度も疲れ、休みを入れていると普通の人が歩くより三倍はかかったような気さえする。
豪華な三階建ての木造の入り口、冒険者ギルドと掲げられた看板の下、両開きの扉を押し開けた。
中は広く受付がずらりと並んでいる。入って右側には酒場らしき場所があるが、昼も過ぎた時間、閑散としていて掃除屋らしい人がテーブルや椅子を拭いていた。
数ある受付も今は職員は二人だけ。休憩中かも知れない。
総合受付と書かれた場所と素材受付と書かれた場所。もちろん俺が行くのは総合受付一択である。
綺麗な水色の髪の受付嬢が座っている。
「あのぅ...。」
「はい!いらっしゃいま....せ?」
俺を見た瞬間受付嬢は笑顔のまま固まった。
「ええッ!?勇者!?何で!?さっき出立した筈じゃ...!?」
受付嬢の声に数人いた冒険者と他のギルド職員が注目する。
「...おいマジか!?本当に勇者じゃねぇか?」
「本当だ!勇者だ!」
「でも随分なよっちぃな?」
ザワザワと静かに沸き立つギルド内。
――誰だ?なよっちぃって言ったやつ。
しかしどうやって勇者とわかったのか?
周りを見渡して気がついた。
そういえばこの国、黒目黒髪を見かけないのだ。
来る途中の人にも何か注目されてるな、とは思っていた。
俺が周りをキョロキョロしてお上りさん状態だったせいかと思っていたが、どうにも違うらしい。
「おい!一体なんの騒ぎだ?...って、勇者!?」
奥から出てきたのは燃えるような朱い髪をした強面の大柄ゴリマッチョだ。
「マスター!ちょうど良いところに!代わって下さい!」
受付嬢の身代わりも早い。
サッと立ち上がって、座っていた椅子をマスターと呼ばれたゴリマッチョに勧める。
「おおぃ!?代わるけどな!?ここじゃアレだ!奥に案内しろ!」
「あ、それもそうですね!」
バタバタを大慌てでカウンターから出て来る受付嬢。
その間にさっさと中へ戻って行くマスター。
俺は一連の流れを呆然と見ていた。
「勇者....さま、どうぞ!奥に!」
「あ、はい。」
勢いよく頭を下げる受付嬢に案内されて俺は応接室っぽい部屋へ入った。
中は木製の長椅子と机がある。
とりあえず長椅子に腰掛けて、マスターが来るのを待った。
少ししてさっきの朱い髪のゴリマッチョが入ってくる。
そして俺の前の長椅子にドカッと腰掛けた。
「...んで?勇者様がギルドなんぞに何の用事だ?」