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「くそッ!日頃の行いがこんなところにまで出るのかよッ!」
思わず悪態をつく。
俺だってせっかく異世界に来たのだから、俺TUEEEみたいなことをやりたかった。
「悠里は寝るの好きだからなぁ。」
「体力無いわよね?体育でも準備運動でバテて見学してるし。」
「でも悠里くん成績は悪く無いよね?体育以外。」
散々な言われようだが、帰す言葉も無い。
だらだら過ごすことが生き甲斐だった俺は昔から運動は避けて通ってきた。
体育はなるべく休み、授業はうたた寝をしながら聞き、帰りは亜玲空に連れて帰ってもらう。小さい頃なんかは亜玲空が俺を背負って帰ることもしばしばあった。さすがに母に叱られたが。
その結果が今の俺のステータスらしい。
――違うんだ、俺はまだ本気出して無いだけ....多分。
ステータスの内容はともかく、この後俺たちは王の間で貴族達にステータスを見せて、明日からは早速訓練が始まるそうだ。
というわけで俺たちは赤い絨毯の上で跪いていた。
「顔をあげよ。」
厳かな声が響く、しかし一回目で顔を上げてはいけないそうだ。
「よい、顔をあげよ。」
二回目でようやく顔を上げる。
目の前には金ピカの豪華な椅子に座る赤いマントのおじさん。この国の国王様と隣にお妃様反対側には俺たちと同い年くらいの金髪碧眼の王子様が座っている。
両脇には煌びやかな格好をしたいかにもな貴族達が並んでおり、俺たちは場違いすぎて落ち着かない。
「諸君、彼らがこの度召喚された勇者である。この者達が必ずや魔王を討ち取り、我が国に平穏をもたらすであろう!力の一旦として、勇者達よステータスを見せよ。」
「「「「はッ。ステータスオープン」」」」
そうして俺たちのステータスは掲げられた。
もちろん俺の異様に弱いステータスも。
「これは素晴らしい!」
「この様な強き者を味方につけるとはさすが陛下!」
「これならば我が国は安泰ですな!」
などなど口々に貴族達は褒め称えた。
もちろん俺のステータスは無視同然である。
「勇者達よ。これから訓練に励み、大いに活躍することを祈る。」
そんな言葉で締めくくり、この場は解散となった。
広々とした客室に俺たちは集まっていた。
男女で分けて二部屋の客室を借りることになったが、みんなで話し合いたいと亜玲空が発案し今俺と亜玲空の部屋に四人が集まっていた。
「さて、これからどうする?」
「どうするもこうするも、しばらくはお世話になるしか無いじゃない。」
「そうだけどさ。このままだと悠里のステータスが心配なんだよ。」
「でも悠里くん置いてくのは無しだよ?絶対四人が良いもん!」
「悪いな。こんなことなら多少は動けば良かった。」
優しいこいつらが俺を置いて行くことは無いだろう。ただ、今回はついて行くと本当に死ぬかも知れない。
俺が少しでも強くなることに期待しよう。