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「それで、連れて来たのかのぅ?」
「はい、ご迷惑なのは承知です。少しでも知恵をお借りしたく。」
「話は聞くがのぉ...。ユウ、他に運び方はなかったのか?担架で運ぶとか、籠に入れるとか。」
今俺は普段背中に背負っているリュートを前にかけ、背中側に薪を運ぶ為の背負子にクッションを縛りつけ、その上に少女を縛りつけている。
洗って綺麗になった白銀の髪を三つ編みにして纏めてロープの様に引っ掛けてある。
お姫様抱っこで運びたいが膝から下が無いので支える為にはお尻を持たねばならず、考えた結果この運び方になった。
亀甲縛りに近い状態で縛りつけられ、一応布で隠しているが、あまり良い運び方じゃ無いだろう。
ギルドにある手頃なもので運ぼうとした結果だった。
「.....無かったですね。」
「無かったか....。まぁ、立ち話もなんじゃ、入れ。」
中に入り、少女を下ろして椅子に座らせる。
少女にお茶を出すが、両手が無ければ飲めない少し考えて麦藁をストロー代わりにした。ストローの原型は麦藁だったという話をどこかで聞いたのを思い出したのだ。本当かどうかは分からないが代わりになるのも確かなので代用した。
「まずは自己紹介じゃのぉ、ワシはヴォルフじゃ。ユウとは師弟であり、祖父でもあるのぉ。」
そういえばそもそも俺と少女は自己紹介をしていなかった。一瞬固まった俺に目敏く気付きヴォルフさんは眉根を寄せる。
「何じゃ?まさかとは思うが、まだ自己紹介しておらんとは言わんよな?」
「....失念しておりました。」
「ユウはどこか抜けとるのぉ。お嬢さんや、こやつはユウと言う。冒険者じゃ。」
「改めまして、ユウと申します。宜しくお願い致します。」
「えっと、私はクレア、竜人族です。よろしくお願いします。」
「竜人族とは....。また珍しいのぉ。」
竜人族は山奥に暮らしている獣人で身体の一部もしくは全体に鱗を持ち、頑丈な身体と強い力で知られている。ただあまり外界と交流を持たず、獣人の中でも最も謎の多い種族だ。
頑丈であるが故に奴隷として価値が高く、街に降りれば狙われやすい。ちょうどクレアさんの様に。
クレアさんには悪いがもう一度話せるだけ境遇を話して貰った。
話していくうちにクレアさんの表情はどんどん強張っていった。
恐怖を思い出したのか僅かに震え手さえいる。
俺は何か落ち着かせるものは無いか?と考えた。
――そうだ、俺のスキル『癒歌』には心を癒す効果がある。
碌にスキルを使って無いので上手くいくかは分からないが、音楽そのものも心を落ち着かせるには良いだろう。
俺は善は急げとリュートを手に少し机から離れて座った。
何かを始めた俺をヴォルフさんは好きにさせるつもりの様で視線は向けたが何も言わなかった。
「少し無理をさせた様ですね。御礼に一曲如何でしょうか?」
「おおっ!それは良い。クレアさんや、ユウはリュートが上手くてのぉ。気分転換には最高じゃて。」
ヴォルフさんも俺の発案に乗ってくれる。
クレアさんも戸惑いながらも頷いてくれた。




