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案内された部屋はどっかの城の応接室のような場所だった。
豪華なソファがあり、座る様に促される。
全員が座ると紅茶とクッキーが用意された。
食べろということらしい。
亜玲空と飛鳥、そして俺は食べるのをちょっと躊躇ったが、深く考えない節のある聖が早速クッキーに手を伸ばす。
「ん、おいしー」
毒があるんじゃないか、とか考えるのは本の読みすぎだろうか?
そもそも呼び出してすぐに殺したりとかは無いだろう、と思い直す。
そしてようやく紅茶を口にした。
一息つくとコンコン、と扉がノックされた。
「失礼します。案内役を仕りました。セイゲル・ジ・ホーレイと申します。皆様への説明と国王様への謁見の作法を指導させて頂きます。よろしくお願い申し上げます。」
――執事だ。執事がいる。
俺は本物の執事を前に状況も忘れて感動していた。
これで名前がセバスチャンなら完璧だった。
「僕は木関亜玲空です。亜玲空、木関と言った方がわかりやすいでしょうか?」
「わ、私は聖、小鳥遊です。」
「私は飛鳥、佐野よ。」
「悠里、斉藤だ。」
「アレク様、ノエル様、アスカ様、ユーリ様ですね。よろしくお願い申し上げます。」
セバス...じゃなくセイゲルさんの話は大体予想通りだった。
ここリムサッカ王国は人族を中心とした国家で、近年多発する魔物の被害に脅かされていた。
そして、その魔物達は魔族つまり魔王により操られている...らしい。
最初は普通に騎士団や冒険者達の手で対応していたものの、今は魔物の数も増えて手に負えなくなった。街同士の行き来でさえも命懸けの状態らしい。お陰で盗賊の数は激減したそうだ。
このままでは人族は滅びると考えたリムサッカの王は古より王家に伝わる秘術、勇者召喚の儀を行い、そこに現れたのが俺たち四人だったそうだ。
俺たちには魔王討伐を頼みたいのだと。
とってもテンプレである。
顔を見合わせるとみんな同じことを思ったらしく、苦笑いだ。
「....えっと、お話は分かりました。」
俺たち代表(勝手に決定)の亜玲空が話す。
「お分かり頂けたようで何よりです。」
「しかし、僕たちは今まで平穏な日々を送っていました。正直言って今すぐ元の世界に戻りたいのが本心です。」
元の世界と聞いた瞬間、セイゲルの顔が悲しげに曇る。
これはあのパターンだろうか?
「残念ながら、リムサッカ王国には皆さまを帰す術がございません。」
「そうですか。」
「しかし、文献によると帰還の魔法陣が魔王城にあると言います。」
つまり魔王を倒さないと帰れません、と。
正しくテンプレ展開である。
「でも、僕達は争いとは無縁でしたし、戦い方なんて知りませんよ?」
「御安心下さい。戦い方は王国騎士団の皆様より学んで頂きます。そこから旅立ちとなります。それに勇者として召喚されたものは何かしら戦いに秀でた方が呼ばれるものでございます。」
全く安心要素が無い。
どうにも魔王討伐の旅に出るのは決定事項の様に感じる。
「実際に見て頂いた方が納得されるでしょう。皆様、試しに「ステータス」と唱えていただけますか?」
おお!この世界にはステータスがあるようだ。
俺はワクワクしながらステータスを唱える。
ちらっと隣の三人を見たが同じように目をキラキラさせていた。