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宿の外で待っていた二人にと合流するとポカン、とした顔をされた。
――てっきり笑い物にすると思ったが...
「ユウ、お前本当は女じゃ無いのか?」
「超可愛いッス!男じゃなきゃ口説いてるっスよ!」
「でしょう?素材が良いのよ、素材が!」
凄く盛り上がっていた。
こほん、とわざとらしく咳払いをして話題を元に戻す。
「で、これで盗賊が釣れるのでしょうか?でなければ、私の苦労が水の泡です。」
「おう!どっから見ても嬢ちゃんだが。...もう一歩、金持ちっぽさが欲しいよな?」
「そうッスね。高そうなもの身につけるなんてどうっスか?デカいネックレスとか?」
「この可愛い系にデカいネックレスなんてわざとらしいわ。却下よ。」
三人で思案する。
やたらと目立つ高級品でかつ持っていて不自然で無いものとはなかなか難しい。
――高級品...。そういえば...。
「あ.....!」
「ん?何か良いもんあんのか?」
「私の私物でリュートが有ります。間違いなく高級品ですよ。」
白磁に金の装飾の施された神のリュートは一目でわかる高級品である。実際の価値も高いのだろう。いくらで買ったのかは怖くて聞いてない。
「リュートって...楽器よね?確か。」
「なんでそんなもん持ってるんだ?」
不思議そうな顔をする三人。
彼らが悪人では無いことはもう既にわかっている。俺は三人に職業を明かす事にした。もちろん口頭だけで。
「私の職業が吟遊詩人だからです。」
シン.....、と一気に静まりかえる。
「.................ユウは吟遊詩人か。」
気まずそうに視線を逸らすレオナルドさん。
「....そう。言いにくんだけど...。」
可哀想なものを見る目で俺を眺めるリディアさん。
「気の毒ッス。」
ニックさんだけは実にあっさりと何も気にせず言う。
気の毒、と口には出しているが、顔は全くそんな事思っていない様に見える。
この人のさっぱりした性格が俺は意外と気に入っている。
「.....お気遣い有難う御座います。」
吟遊詩人は戦闘に向いていない。それがこの世界でも常識である。
ヴォルフさんに護身術を習う時も散々言われており今更傷ついたりはしない。
先に旅に出た勇者と合流したい、と言う俺にヴォルフさんは恐らく不可能に近いと思って挑む様に、と言った。
職業による差はこの世界ではとても大きい。
例えば鍛治師がいたとして、剣士のスキルを手に入れるには剣士の十倍以上の努力がいる。
そして例えスキルを手に入れても剣士のものと比べてどうしても劣ってしまう。
つまりは吟遊詩人の俺は冒険者自体に向いていないのだ。
――ゲームなら吟遊詩人でも勇者について行けるのにな...。
現実とは甘くないものだ。
「本当にユウが吟遊詩人なら、既に剣術は天才レベルッス。十分食っては行けるっスよ。」
だから元気出すッス、とニックは言う。初めから落ち込んでは無いのだが。
俺は宿の部屋に置いてきたリュートを背負い戻ってきた。
リュートを見た三人の目が驚きで見開いた。
「ユウ!そんな高そうなもん宿に置きっぱなしにしたのかよ!?」
「俺ならこの宿入り放題ッス!無防備過ぎるッス」
慌てて説教する三人にリュートの呪いを説明した。
「なるほど、アーティファクトね。それ以上の防犯は無いわね。」
「あーてぃふぁくと、とは何でしょうか?」
「知らないで持ってたの!?」
アーティファクトとは千年以上前にあった古代文明時代において使用されていた魔道具のことで、非常に高性能で壊れにくい。そのため今でも遺跡の中で使える状態で眠っており、発掘されたものは高額で取引されているそうだ。
知らなかったが『変装のピアス』もその一つで最も良く出土するものだそうだ。星形か月の形をしているのが特徴である。
「なぁ、前から思ってたんだが、ユウって貴族の坊ちゃんなのか?」
「あ、それ気になってたっス。動作は綺麗だし、世間知らずだし、高級品を知らずに持ってるし、何者っスか?」
「....ごく普通の一般人ですよ。世間知らずは認めますが。」
「ユウが一般人は結構無理があると思うわ....。」
「まぁ、私で囮役は出来そうですから、良いじゃ有りませんか。」
納得いかない、と言う顔をする三人を強引に纏めて誤魔化した。




