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振り返るとそこにはワインで染めたような濃い赤い髪の大柄の男が二人の仲間を連れて立っていた。
俺はその人たちに見覚えがあった。ゴブリンの巣を潰した時に共闘したAランクパーティー『暁のイデア』だ。
赤髪の男がリーダー『紅蓮のレオナルド』さんだ。
「怪しい奴....って、お前ユウか?」
「レオナルドさん。この様な場所でお会いするとは、奇遇ですね?」
「何やってんだよ?散歩なら街ん中でやれよ。」
構えた剣を下ろして呆れた様に言う。
どうやらレオナルドさんはこの辺りで起きた貴族のお嬢様の誘拐事件を追っているらしい。
怪しい人物が居ないか探していたところ一人ふらふら歩く怪しい俺を見つけたので声を掛けたんだそうだ。
俺も盗賊を探しているだけだ、と説明する。
「盗賊の討伐か...。もしかすると依頼がダブってるかも知れねぇな。」
「そうですねぇ....。誘拐といえば盗賊ですから。」
別々の依頼主が出した内容が原因が一緒だったりする事がある。
その場合、後から受けた側が依頼失敗となり、ペナルティを受ける場合があるのだ。
「ねぇ、ならまた共闘しましょうよ?」
そう言ったのは『暁のイデア』の魔導師『氷結のリディア』だ。
綺麗なリナさんよりも濃い、冬の海の様な青の髪を耳にかけて腕を組んでいる。組まれた腕で豊満な胸元が強調されていた。
思わず視線を向けたくなるが、ギリギリで踏みとどまった。
「おおっ!良いっスね?ユウは強ぇから歓迎っス!」
凄い下っ端感があるのはもう一人のメンバー『疾風のニック』だ。背が高いのに細身で見た目通り身軽だが、前回のゴブリン退治ではゴブリンの上位種相手に瞬殺する腕のあるアサシンである。
Aランクパーティーが関わってる時点で俺の出番なんて無いと思う。
どんな結果であれ一人でも捕らえることができれば良いのだから助かるとも言える。ここは有り難くおこぼれに預からせて貰おう。
「『暁のイデア』が味方とはこれ程心強いことは御座いません。こちらこそ宜しくお願い致します。」
「じゃあ決まりだな。またよろしく頼む。」
「微力ながら最善を尽くします。」
レオナルドさんが差し出した手を俺は握り返した。
「...で、これからどうするんスか?今日一日張ってたッスけど、盗賊出てないッスよ?」
「そうですねぇ....。闇雲に探しても見つからないのでしたら、囮でしょうか?」
そう言った俺に三人の視線が集まる。
ただその視線に嫌な気配を感じるのは気のせいだろうか?
「囮か...。.....悪くねぇな、いけそうだ。」
「ユウって細いわよね?服で隠せば鍛えてる様には見えないわ。」
「顔も可愛い系ッスね。俺はいけそうッス。」
「は?何言って....。」
ニヤリと笑う三人。
「「「もちろん、ユウの女装だ。」よ。」ッス」
「.............。」
俺はくるりと三人に背を向けた。
しかし、ガシリ、と肩を掴まれる。
「いやいや、私では務まりませんよ。第一に私は男ですから、体格も違います。」
「大丈夫だって、ちょーっと囮になる間だけだしよ?」
そのちょっとが嫌なのだ。
「私が服もお化粧もやってあげるわ。安心して。」
リディアさんの目がいつに無く輝いている。とてもじゃないが安心出来ない。
「俺は背がデカ過ぎるし、レオじゃゴツ過ぎッス。ディアは...とにかく、適材適所ッス。」
年、と言おうとしたニックさんはリディアさんに睨まれて言葉を濁した。
明らかに楽しんでいる様に見える三人。
俺の必死の抵抗も虚しく、宿屋に戻りリディアさんの手により俺は女装させられた。道具は宿屋の前の怪しげな露店でレオナルドさんたちが気前良く買ってくれた。ストロベリーブロンドと書かれた俺の今の髪と同じ色のウィッグに、胸に詰める分厚いパッド、果ては若干大きめのドレスまで売られていた。
――あの露店商は何故女装グッズを売ってたんだ?
知りたい様な、知りたくない様な、複雑な気持ちだ。
「やっぱり似合うわ。可愛いわよ、ユウ。」
「嬉しく有りませんので、お世辞は結構です。」
お世辞じゃ無いわ、と手鏡を渡される。
『変装のピアス』をつけてからは一度も自分の顔を見ていなかった。
最初のうちは気になったのだが、宿屋に鏡がなかったため、忘れていたのだ。
視界の端に入る色で髪の色がほんのりピンクの金髪であることには気づいていたが、目の色は分からなかった。
鏡を覗き込むとそこには鮮やかな緑の目をした女性がいた。笑顔が引き攣っているからには自分なのだろう。
――まつげまで髪と同じ色になるとは『変装のピアス』は実は凄い品だったりするのか?




