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隣街から王都へ続く街道は綺麗に整備されており、時折馬車が行き交っていた。
所々に街道を警備する警備兵の姿も見える。昼間は比較的安全に行き来出来る場所だが、夜になればウルフなどの夜行性の魔物も出没する。
他の街道に比べると遥かにその数は少ないそうだ。そして今回依頼のあった盗賊も街道周辺を根城にしている事が多い。
この辺りの森は依頼を受けた冒険者達が周辺の魔物を狩っているため比較的安全に潜伏出来るのだ。
今は昼間、商人達が行き交い盗賊の姿は見えない。夕方に目撃者が多いと聞くため、それまでは周辺の下見である。
街道周辺は割と見晴らしが良く、隠れて行動するのは向いていないように見える。
俺はリュートを背負い、腰に借りている長剣を持って街道を歩く。一応、一部森が近い場所や、大岩があり隠れやすい場所などを見て回るが、盗賊の姿は無い。
あとは誰かが被害に遭ったところを捕らえるしか無い。
街道のちょうど真ん中に当たる場所に一件の宿屋がある。この街道は隣街までが徒歩で約二日、馬車で丸一日かかるため間に宿があるのだ。王都へ向かう人々は多く程よく賑わいがある。貴族や商人もいるが、殆どの利用者は冒険者。自然と宿の警備員の代わりにもなっている。
俺も今夜はこの宿に宿泊予定だ。
『ヤドリギ』の部屋は一旦チェックアウトしている。
――『ヤドリギ』以外の宿屋に泊まるのは初めてだ。
この宿も一階は食堂になっており、外には露店が並んでいる。
中に入るとカウンターにはゴツいおっさんが居た。
「すみません。今晩一泊でお願いしたいのですが、空きは御座いますか?」
「ああ?....一泊銀貨二枚だ。」
素っ気ない態度で刺青の入った片肘をついておっさんはそう言った。
俺は笑顔を崩さずもう一度聞く。
「空きは御座いますか?」
「...........。」
男は舌打ちをして奥へ引っ込む。しばらくして慌てた様に別の男が出てきた。中年の男性で人の良さそうな顔をしている。
「大変失礼致しました。空きは御座います。一泊の代金は高いお部屋で銀貨五枚、安いお部屋で銀貨一枚です。」
「では、安い部屋を一部屋、一泊でお願い致します。」
さっきまでいた態度の悪い店員はこの宿に泊まっていたお客さんだった。宿屋の主人が出ているのを良い事にカウンターに陣取っていた様だ。
良くある事だそうで、騙される人も中にはいるらしい。
あそこまで態度が悪く明らかに荒事専門の見た目では分かりそうなものだが。
この世界にはそんな見た目の宿屋の主人が居るのかもしれない。
俺は部屋の鍵を受け取り、店主からいくつかの注意事項を聞いた。
この宿は二つの建物が並んで建っている様な見た目で、一つが小綺麗な建物。もう一つは今いる一階が食堂になっている建物だ。綺麗な方は貴族様や商人などお金のある人が泊まり、もう一つは一般の人が泊まる建物だ。夜は酒場にもなる事から騒音を防ぐために二つに分かれているのだそうだ。
宿屋の前に並んでいる露店は勝手に来た旅の商人が開いているもので、詐欺に気をつける様に言われた。
借りた部屋は『ヤドリギ』の様にベッドだけでいっぱいの部屋だ。これがこの世界の普通なのかも知れない。
俺は『ヤドリギ』に居た時の様にベッドにリュートと一緒になって横になる。
今回の依頼は夜遅くなるかも知れない。
念のためにそのまま少しの昼寝をとった。
目が覚めてから、宿にリュートを置いて、街道沿いをふらふらと歩いて回る。
都合よく盗賊に襲われる人は表れてくれない。
行き交う馬車の数が少しずつ減ってくる。一人歩きする俺は周りから見ると不審者だろう。
「おい、そこの男、止まれ。」
案の定、低い声で後ろから声をかけられた。
ピタリ、と足を止め、ゆっくりと後ろを振り向く。




