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「...おおっ!成功か!」
「でかしたぞ!さすがは宮廷魔導師長様だ!」
そんな声をきっかけに俺たちの視界に色が戻っていく。
だが、戻った視界に映ったのは夕方の教室では無かった。
薄暗い部屋だ。
松明の灯りだけが頼りではあるが数多くの火が灯されており、目の前に並ぶローブ姿の怪しげな集団を照らし出していた。
足元にはまだ僅かに光りながら、しかしすぐに消える丸い円型の模様。
そう、例えばファンタジーの定番。魔法陣のような...。
「.......へ?」
俺が出せたのはそんな間の抜けた声だった。
「「「.......は?」」」
隣から似たような間抜け声が三人分。
横を見ると呆けた顔で怪しい集団を見つめる見慣れた幼馴染の姿があった。
俺たちが固まっていると、ローブの人?....ローブ集団の先頭にいた人?が口を開いた。
「突然のことで大変混乱されていることかと思いますが、私たちの言葉は分かりますか?」
状況が読めない俺たちは目配せをして、亜玲空をみた。
こういう時はこいつに頼むのが一番なのだ。
昔から何かトラブルがあると俺たちは真っ先に亜玲空に頼る。
亜玲空は俺たちをみた後で真っ直ぐにローブを見つめる。そしてゆっくり頷いた。
混乱してはいるがこういう時に落ち着くのが早いのは亜玲空だ。
「....結構です。簡単に説明させて頂きますと、貴方達はこことは違う世界から召喚されました。」
本当にざっくりした説明である。
聞いたところで、はぁ?と言われてもおかしくはない。
だが、俺たちはその言葉でいまの状況の半分くらいは理解できた。
異世界召喚。
小説やマンガ、アニメやゲームの世界でそれは有名であった。
俺たち四人もそれなりにそういったものに触れる機会があった。主に俺が原因だが。
とにかく、今俺たちはその異世界召喚された状態の様だ。
テンプレであればここから王様か王女様が登場し、魔王の討伐へ旅に出る、はず。
「今は混乱されていると思いますので、後ほど改めて説明させて頂きます。皆様には一旦休息をと思っております。ご案内致しますので、私の後についてきて下さい。」
そう言ってローブは背を向ける。
ローブがローブ集団に向けて深々と礼をすると、一人豪華そうな装飾のあるローブが頷いた。
――あれが王様だったりして...。
「...どうする?ついていくの?」
小声で提案したのは飛鳥だ。
元より慎重な性格の飛鳥は目の前のローブが信用ならないらしい。
「....他に方法が無いよ。」
亜玲空は短く返すとローブの後ろに続く。
「あ、待ってよ!」
聖はまだ混乱している様だ。キョロキョロしながら亜玲空に続く。
飛鳥も盛大にため息をついて聖の横に並んだ。
――俺も行くか。
普通の高校生はこういう時相手に従うくらいしか出来ない。
どっかの小説ではこういう時に相手を探ったり、逃げたりしてたがやはり小説。探ろうにも、なんか偉そうなローブが一人いるなぁ...。くらいしか分からなかった。