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ヴォルフさんとリュートの特訓を始めて一ヶ月、俺の一日は『ヤドリギ』で起床し、朝ごはんを食べてギルドへ向かいヴォルフさんからの依頼を受ける。そこからヴォルフさんの自宅へ行きリュートの練習。体感で三時頃にマリアさんのところでお茶を頂き休憩。ヴォルフさんのところへ戻り護身術を習う。そして夕方にギルドで報酬を受け取り『ヤドリギ』で夕飯、就寝だ。
マリアさんはお茶のついでに礼儀作法も教えてくれる。
お陰で俺はどこの貴族だ?と聞きたくなる様な生活をしていた。
今日も護身術でヴォルフさんにボコボコにされた俺は宿屋のベッドで伸びていた。
一ヶ月もやれば筋肉痛も来なくなる。が、疲労が無くなるわけでは無い。
上達しているとヴォルフさんは笑うが、未だに全く手も足もでないと実感が湧かないものだ。
騎士団に放り込まれた時よりさらにハードな生活をしているのにあの時と違い、途中でバテないのはヴォルフさんの蔵に眠っていた神のリュートのおかげであった。
神のリュートを手に入れた時、俺の脳内でアナウンスが流れた。
解放されました。というアナウンス。
それに心当たりがある。ステータスだ。
文字化けと未解放の文字が大量にあった俺のステータス。
宿に戻った俺は早速部屋でステータスを開いた。
ユーリ・サイトウ[Lv.#32]
種族:人族[#?%$!]
職業:#?%$![吟遊詩人]
HP:#?%81531/#?%81531
MP:#?%72311/#?%72311
スキル
異世界語[リムサッカ共用語]
快眠[#?%!]
子守唄Lv.∞
呪歌Lv.23
鎮魂歌Lv.30
癒歌Lv.132
ステータス隠蔽[US]
未解放
未解放
空欄
適正
光
闇
無
#?%$!
空欄
空欄
加護
神のリュート
未解放
空欄
相変わらず文字化けも未解放もあるが、だいぶ変わっていた。
まず自分のレベルが跳ね上がっている。
意味の分からないスキルも追加されている。
そして俺の文字化けしていた職業が発覚した。
吟遊詩人、俺の知ってるゲームのイメージだと勇者パティーの補佐役である。
歌で仲間の攻撃力や防御力を上げ、敵には逆に下げるという役。ほとんどの場合で体力がない為、また本人には攻撃力が皆無の為、不人気のイメージだ。
――子守唄はわかるが、呪歌ってなんだ?
俺は元の世界のノリでタブレットサイズの画面をつつく。
すると呪歌の下に説明文が出た。
『呪歌』
敵を相討ちさせる呪いの歌。最後に残ったものは呪いで身体が腐り落ちる。
聴覚を持つもののみに効果あり。効力はスキルレベルに依存する。
「............」
めちゃくちゃ物騒なスキルだった。
呪いで身体が腐り落ちるそうだ。出来れば見たくない。
スキルレベルに依存、ということは俺は現在Lv.23までの魔物ならこれで倒せると思って良いのだろうか?
残りのスキルも確認する。
異世界語
生まれた世界と異なる世界の言語。一度でも触れた言語なら聞く、話す、読む、書く、が出来る。
[]内は現在使用中の言語。
快眠
いつでも#?%$熟睡出来#?%る。
[]#?%$!%?$?
子守唄
優しい眠りへ誘う歌。低いレベルの敵はこの歌で永遠の眠りにつく。
眠った対象の体力を全回復出来る。
鎮魂歌
彷徨う魂の為の歌。アンデッドのみに有効。
光属性。
癒歌
聞いた者の心と身体を癒す歌。神のリュートで弾けばリュートの傷、汚れが修復する。
ステータス隠蔽[ユニークスキル]
ステータスオープン時、ほとんどのステータスが自動で隠蔽される。解除した場合は全てが公開される。選択して隠蔽はステータス前をタップして選択。
子守唄が意外にも攻撃スキルだった。
快眠は文字化けで読みにくいが、あまり必要がないスキルの様な気がする。
リュートの傷を癒せるのは有り難い。大切な貰い物を壊す気は全く無いが、この先旅に出るならば何が起きるか分からない。
異世界語は少し聞いただけでも良い様だ。城にいた頃、方言とあったが俺は学んだ覚えが無い。誰かが喋っているのを耳にしただけだと思われる。
ステータスの隠蔽に書かれた通りステータスの文字の前を突くと黒丸と白丸がでた。黒が隠蔽、白が表示らしい。
HP、MPに至っては下何桁表示という選択だった。現在二桁になっている。
通りで低いわけだ。俺は表示を下三桁に変更した。セイゲルさんが言っていた平均はHP500にMP300だったはず。これでちょうどいいだろう。
そこだけ変更して俺は満足すると、布団を被り眠りへついた。
満足してしまったのだ。だからステータス隠蔽のスキルが隠れていないことに全く気が付かなかった。
翌日、ヴォルフさんに会った俺はステータスを見せてくれ。と言われ思わずステータスオープンで見せた。
そしてステータス隠蔽のスキルと異世界語であるリムサッカ共用語を見たヴォルフさんに思いっきり叱られたのだ。無防備過ぎる、と。
普通は言語はスキルに付かないのだそうだ。お陰で異世界から来たことまでばれてしまった。
常識とついでに礼儀作法も習えと言われ、紹介されたのはまさかのマリアさんだった。
こうして俺はヴォルフさんからリュートと護身術。マリアさんから礼儀作法を叩き込まれる生活になったのだ。
一ヶ月前を思い出しているとコンコン、とノックの音が響く。女将さんがお湯を持ってきてくれたのだ。
「ユウ!お湯持ってきたよ。部屋の前に置いとくからね!」
「....有難う御座います。」
ベッドに寝そべったまま俺は返事だけ返す。
ユウ、とはマリアさんが考えてくれた偽名である。貴族でも無いのに苗字があるのも不自然だというヴォルフさんの意見により偽名での生活が決定した。ギルドにもその旨を伝えるとすぐにギルドカードと情報を変更してくれた。幸いにも名前を知る人物が少なかった為、簡単に偽る事ができた。
俺は動きたく無いと訴える身体を叱咤して、ノロノロと起き上がる。お湯の入った桶と布が扉の横に置かれていた。お風呂が無いこの世界ではこれで身体を洗うくらいしか汗を流せない。真夏ならば川に入れば良いだろうが、水に浸かるにはまだちょっと早い。
適当に拭いて下着も適当に洗う。
ようやく横になると一気に眠気が襲ってくる。
泥に沈むように俺は眠りについた。




