Яegret
短編創作BLです
お手数ですが、こちらを読む前に「Regret」を読むことをオススメします(もう1人の視点から描いたものです)
↓↓↓
http://ncode.syosetu.com/n8049eg/
視点:篠宮 康
上城 辰冴
“同性婚、どうなる”
ふと見たテレビでやっていたのを思い出す
同性愛者は異常であるこの世の中で
俺達もまた例外ではなく
本当に好きだった
このままだとよくない
誰も幸せになれないと思った
「卒業したら、終わりにしよ」
猶予を付けたのは自分の甘えで
「うん」
思ってたよりスッキリとした返事に、戸惑うと同時に安心した
正しいと信じていた
これで元に戻れると
…
卒業式の日
俺は何も言えなかった
伝えたいことはたくさんあった
長ったらしい祝辞はまったく頭に入らず、ずっと1つのことを考えていた
“卒業生、退場”
気付けば式は終わっていた
何も思うことはなかった
思い残すこともない、はずだった
「辰冴」
頬に手を伸ばす
このまましてしまったら
もう戻れない、そう思った
「じゃあね」
俺ができる精一杯の別れ
本当は戻れなくてもよかったのに
辰冴は、悲しそうに笑った
やめろ
こんな時に、見たことない顔をしないで
…
あれから何年経っただろう
俺に婚約者ができた
「招待状誰に出す?」
「…なんでもいいよ」
「もーまたそう言うんだから」
彼女は何かと世話を焼いてくれる人だった
俺と付き合う時点でだいぶ変わった奴で
初めて人を好きになったような感覚だった
「…」
「出したいのがいる」
迷惑だと思うだろうか
きっと困惑するだろう
許して
無責任な奴だと、自分を嗤った
高校の時の知り合いを辿って住所を聞き出す
連絡先はまだ手元に残っていた
(直接聞けばいいのはわかってる)
俺は何も知らない
今、どんな姿をしているのかも
記憶はあの日で止まったままだ
…
ついにその日はやってくる
出席するとの返事が来た時は
自分が呼んだにも関わらず、少し気まずさを覚えた
どんな顔をすればいいだろう
式が始まる
俺は辺りを見渡した
…見つけた
髪型は変わっていて、背格好も心做しか大きく見えた
あの時とは違う
後ろで佇む姿を、誰にもバレないように見つめた
お前は、何を思ってそこにいるの
考えられなかった
何故来てくれたのかも自分が何故呼んだのかも
割り切ったつもりだった
指輪の交換が始まる
今の俺は幸せだ
もちろんこれは偽りではない
でも違うんだよ
別の話なんだ
どこまでも不甲斐ない俺を許して
自然と溢れるこの笑みも
抜けない心の蟠りも
全部本物なんだ
“永遠の愛を誓いますか”
「誓います」
…
「本日はありがとうございました」
長い式が終わる
あっという間だった
あの日と同じ
もうそこに姿はなかった
「…ちょっと行ってくる」
「えっ、どこに?!」
返事も聞かず走り出した
このままじゃ駄目だ
「辰冴!」
立ち止まって、振り向く
「…康」
急いで駆け寄った
「…えーと、久しぶり」
情けないもので
何も言葉が出てこない
「久しぶりw元気だった?」
変わらないその笑顔が、懐かしく思えた
「まぁ…そりゃね、ここじゃあれだし向こう行かね?」
聞きたいことがあった
あの時言えなかった言葉も、伝えたい
このまま離れたくないと思った
2人で腰掛ける
久しぶりの感覚は、案外心地よいものだった
「結婚おめでとう」
「おう、サンキュ」
記憶より少し低い声にどう反応すればいいのかわからず、とりあえずお礼を言う
何か話そう
「お前は?彼女いんの?」
「前までいたけど別れたw」
「ふーん…」
聞かない方がよかったかなと、少し申し訳なくなった
「いやーでもまさか康が結婚するとはねwビックリした」
自分でもそんなこと思わなかったよ
ずっと焼き付いて離れなかった
「……今日、何で来てくれたの」
聞いていいのかもわからなかった
ただ知りたかった
小さく口が開く
「それは…」
「こーちゃん?」
その言葉は、背後から来た声に遮られた
「もーすごい探した…あっ、すみませんお邪魔しちゃって!どなたですか?」
辰冴がいることに気付かなかったらしい
わからないのは当たり前だ
会ったこともないのだから
「上城です」
「もしかして、上城辰冴さん?」
「えっ、あ、はい」
名前を呼ばれた辰冴は驚いた様子だった
正直、俺も教えたつもりなかったから驚いた
「すみません、いきなりビックリしましたよね…あの、招待状出す時、こいつには出したいって珍しくこーちゃんが言ってたから名前覚えちゃって」
「おまっ、バカ余計なこと言うな」
突然の暴露に焦る
言わなくていいそんなこと
「高校時代の親友って…」
本当は“親友”なんかじゃない
でも、それ以外にどう表せばいいかわからなかったんだ
「康とは、仲良くさせてもらってました」
辰冴が立ち上がる
「素直じゃないし、わがままだけど、本当はすごく優しいし、いい奴です」
何を言ってるんだ
やめろ、やめてくれと
「ずっと、最高の親友でした」
辰冴は深くお辞儀をした
「結婚おめでとうございます、末永くお幸せに」
お前は今、何を考えてるの
何を思ってその祝辞を
辰冴の表情は変わらなかった
「ありがとうございます!」
嬉しそうな声が響く
「あっ、写真撮らなきゃいけないから早く来てね?」
「わかったよ」
「それじゃあ上城さん、さようなら!」
そう言うとまた走って戻っていった
「じゃあ、俺もそろそろ帰るね」
背を向ける、あの日見た背中より大きく感じた
「辰冴」
腕を掴んで引き寄せる
そのまま振り向く体
あの時出来なかったこと
瞬間、顔を近付ける
許されるはずも、なかった
もう遅い
と言うように
その手は俺を塞いだ
「じゃあね」
微笑んだその顔が、悲しげに映る
辰冴は振り向かなかった
膝から崩れ落ちる
心のどこかに
大きな穴が空いた感じがした
涙は出なかった
わかってた
あの時、俺は間違ってると
何で
こんな風になりたかったんじゃない
今更気付いてもしょうがない
もうずっと、戻れないまま
最後まで読んでいただきありがとうございました!
両方を読むとまた違った捉え方ができるのではないでしょうか…
普段はもっと幸せなものを書いています笑
よかったら他の作品もご覧ください^^*




