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FROM 未来  作者: 日高遊苑
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ver.3:捜索場所1

「……晴也って、意地悪だね」

「…今の話聞いた第一声がそれ?」

晴也は、予想外な陽友の発言に苦笑いする。

彼女は「う〜」と唸ったあと、彼の方を向いて言った。

「だってそうでしょ?今の話じゃあ、私の名前は聞くまでもなかったんじゃない」

「それは……。いきなり見ず知らずの俺に名前言い当てられちゃったら、正直引いちゃうと思ったしっ」

「そりゃびっくりだけど。…それに、なんだってあんな“未来を信じますか?”なんてメール送ってきたりしたの?

あんな言い方しなくたって、本当のことそのまま言ってくれれば、私は晴也を信じてたと思うよ?」

晴也は心底意外そうな顔をして見せて、悪戯っぽく続ける。

「俺は、陽友はもっと悪女で疑り深い女かと警戒していたのだよ」

「ぷっ。なにそれ〜」


一緒に喋っている限りでは、晴也はいい人そうだ。

私を利用しようとしてる訳でもなさそうだし。

 話を聞いていて、『私も力になれるかな』なんて思ってしまったくらいだ。

晴也はこちらに顔を思い切り近づけて来た。

「な何っ!?」

「う〜ん?ちょっとじっくり観察中〜」


最初は真面目だと思っていたけれど、そうでもなかったらしい。





「それで、本題だけど」


単刀直入に言うと、俺の母さんを捜して助けるのを手伝って欲しい。

俺の時代で調べて分かったんだけど、この空気にはもう、悪性の物質が充満してる。

たぶん、このまま息を吸ってるだけで感染していく病気なんだと思う。

患者の容態を見てきた限りじゃあ、俺たちはもう感染していても可笑しくない状態。

いつ苦しくなってくるか分からないし、もしかしたら突然動けなくなるかも知れない。

“じゃあ…私たち、結局は病気にかかって死んじゃうの”

いや、万一に備えて薬を多めに持ってきた。

これをうてば、対毒効力がつくから。

“じゃあ、早くお母さんを捜そう?”

それなんだけど……。

なにしろ俺が生まれる前の街だから、地図は持ってきたけど、母さんの住んでた場所までは分からなかったんだ。

親父とは話したことなかったし、まして母さんの話なんて持ちかけたらどうなるか知れねえし。

“そっかぁ……。どうしよう…?”

だからまず、そこら辺にいる人たちに聞いてみようと思う。

ウチって結構親戚多かったから、苗字出せば誰かしら知ってる人がいると思うんだ。

“じゃあ、それぞれ聞きに廻ってみよっか”


それから私たちは、生き残った住民たちに二手に分かれて聞き回った。



『まず、私の知り合いをあたりたいんだけど。

やっぱ捜索するところから始めなきゃダメ、……だよねぇ』

陽友は憂鬱になりながらも、人の集まっていそうな学校跡地に向かった。


「あっれ?」

歩き慣れている街だから、自分の通ったことのある学校の場所なんて道がなくとも分かる。

でもなんなんだ、この異常なまでの人気の少なさは。

『災害時は学校に集合!って、相場が決まっているでしょうが』

高校では比較的成績が低い部類に入る陽友の偏った知識では、こんな災害時は普通学校に集まるものだ。

しかし、いざ来てみた学校にはほとんど人がいなかった。

「…すいませ〜ん」

見た感じでは落ち着いている男性に声をかけてみる。

その男性は、目の前の光景に唖然としているよりも、迷っているような硬直の仕方をしていた。

彼は理科の教師でもやっているのか、よれよれになった白衣を着ていた。

「…君は、ここの子か?僕はこの学校の教員なんだが」

この学校は陽友が通っていた中学校だ。

確かに、陽友は今でも中学生に見間違えられるほど童顔だ。

「…中学生のときは通ってましたけど。私、高校生です」

「あっ、悪いね。歳を積むと若い子の年齢が見抜けなくて困るよ。」

彼は自分を、森永勇夫(もりながいさお)と名乗った。

見たまんま、ここの理科の教員を担当しているらしい。

たぶん、陽友が卒業した後に入ってきた人なんだろう。

この男性は見覚えがなかった。

森永先生は崩れ落ちた校舎を見つめながら、悲しそうな顔で言った。

「…ここの瓦礫の下には、放課後残っていた教え子たちが逃げ遅れているのかも知れない。

僕は…それだけが心残りで……」

その顔は慈悲で満ちあふれていて、それを見て『この人は、偽善(うそつき)なんかじゃない。』

そうはっきりと見てとれた。

「僕はちょうど、隣街まで出張していてね。理科の教員の集まりで。

生徒たちが怖い思いをしている間、何も知らずに呑気(のんき)に話し合いなんかしていて…。

急いで飛んできたけれど、この有様だ。全く、不甲斐ないにも程がある」

「そんなこと…」

きっと先生は罪悪感を背負っているんだろう。

巻き込まれる筈だった自分が、自分だけ助かってしまうなんて、悲し過ぎるもの。

「そんなの、先生は全然悪くないのに」

「いや。でもきっと…そうだな、納得しようにもし切れないんだろう。

未だこの現状が信じられずにいるんだ。まるで、夢みたいで。

今自分は睡魔に襲われて眠りこけている……、そんな夢な気がしているんだ」

それは同じ気持ちだ。陽友も未だ、なんでまだ夢が醒めないんだろう、早く醒めてしまって、なんて考えている。

…夢なんかじゃない、これは真の現実。事実なのに。

こんなに現実味を帯びたビジョンなのに、なんなんだろうこの光景は。

そんな考えがよぎっている。

そんなことを思っている陽友に、森永先生は言った。

「…まだきっと、助かる希望はあるはずだ」

森永先生は陽友を優しく一瞥し、微笑んだ。

「……見た感じ、君は一人なんだね?

…きっと君の家族は生きているし、心配しているよ。早く帰って捜しなさい、その方がいい」

  はっとする。

そう言えば、私の家族はどうなったんだろう。

お父さんとお母さん、それにおばあちゃんは家に居た筈。

私の家の周りには大してなにもないから、きっと安全。

お兄ちゃんは振り替え休日でお休みだったから、友達と遊びに出かけてる筈。

運がよければ街の外に出ているし、もしかしたらお気に入りの川辺にいるかもしれない。

それなら、川波が勢いを増していない限りは大丈夫。

妹は?あの子はあの時間なら大抵、道草を食って近所の子犬のところへ遊びに行ってる。

あそこの家はおばちゃんが優しいから、幼い妹を想って見守っててくれる。

だからきっとあの子は保護してくれたに違いない。

無事でいてくれるといい。

(リタ)黒猫(エル)はどうしただろう。

リタは室内犬だからお父さんたちと一緒かな。

エルは猫だから、きっと危険を察知してたのかも知れない。

そう言えば、朝早くから唸って出掛けて行ったんだっけ。

『あのネコ……、分かってたんだったら何か示してから出掛けろっての!』

エルとは仲の悪い陽友は、心の中で悪態をついた。


…そんな風に家族の事を考えていると、いつの間にか、森永先生が私を心配げに見つめていた。

「す、すいません考え事してました…」

そして、ここへ来た目的を思い出す。

「そうだ、先生。先生はこの辺りで、梶浦という方を知りませんか?

近辺に詩居合いがいるとか、苗字を聞いたことがあるとか、生徒に同じ苗字の子がいるとか」

彼は少し考える素振りを見せたが、困ったような顔で「少なくともこの辺りの人では知らないなぁ」と言った。

「そうですか…。色々ありがとうございました。やっぱり、そろそろ失礼しようと思います」

彼は満足そうに頷くと、陽友の頭に掌を置いて撫で、「そうしなさい」と微笑んだ。

軽く会釈をして微笑み、「じゃあ、また」と、別れを告げた。


「さぁ、次っ!」

陽友は手がかりを掴むべく、別の場所をあたることにした。

この部分は少し長ったらしい捜索シーンにしようと思ってます(^-^;

そんなこんなですが、お付き合いして頂ければ幸いです。

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