6、なんか不味かった朝食とつまらない今日
お待たせしました!!
んんー。家のベッドってこんなにふかふかだったっけ? 燦燦と照らす日差しが気持ちいいなー……って、ここ、王宮じゃん! すっかり忘れてた。そういえば昨日は王宮の、マリヤの部屋で寝たんだっけ。
「マリヤ、起きて! 朝だよ」
マリヤはどうやら熟睡してるみたい。
「なあに? シャナ。私、……」
と言って夢へと旅立ってしまった。マリヤっていつもはしっかりしてるけど、寝てる時だけすごい子供っぽいんだよね。妹らしくって可愛い。
『宮殿放送です。面接で十五名が選ばれました。今から名前を挙げたものは直ちに謁見の間へ来なさい』
そんなことを考えていたら、放送が流れてきた。エノー村で聞いたことがなかったから、とても新鮮。話によると、一瞬で移動できるモノや、声に出さずに思いを伝えることのできるモノもあるらしい。
『ナシア・ブルックリン、ルーア・カリス、……シャナ・アングリアナ、マリヤ・アングリアナ、……リュイ・オクサムル。以上の十五名です』
あたしたちと似た名前だな、シャナ・アングリアナとマリヤ・アングリアナって。もしかしてあたしたちの名前を読み間違えたのかな? だとしたら行かないと。
こういう時は、マリヤに聞くのが一番だ。もうちょっと寝ててほしかったけれど。
「マリヤ、起きてー。あたしたちの名前らしきものが王子の宮殿放送で読み上げられたんだけど」
「お、王子っ!? 分かったわ起きる!!」
「おはようマリヤ。シャナ・アングリアナとマリヤ・アングリアナってあたしたちのことだと思う?」
「おはよう、シャナ。うん、絶対そうだと思うわ」
「んじゃ、謁見の間に行かないとね。『直ちに』って言ってたから」
「分かった!!」
そこからのマリヤの着替えのスピードは本当に光ぐらい速かった。そして、いつも「みっともない」と言って走らないというのに全速力で謁見の間へと走っていった。あのひと、マリヤだよね? って思っちゃった。驚きを隠せない。
そうこうしている間に謁見の間についてしまった。十三人の女の子と、カラリウ、そして綺麗だけど怖そうな女の人がいる。
「ようやく全員集まったよう。我が直接説明する故、黙って聞け」
偉そうなしゃべり方。本当に偉い人なのかもしれないけど、気に食わないな。
「お前らは我の息子カラリウの花嫁候補となった。今から我らとともに朝食を食べないか? もし我の義娘に適さぬ者と思えば、すぐ故郷へ帰してしんぜよう」
本当に偉い人だったんだ。ふつう、こういう場合は王様が出そうだけど。
にしても、何でこんなしゃべり方なんだろう。カラリウはいい感じのしゃべり方なのに、残念だ。
「ちょっと、シャナ!! 何ボーっとしてるの? あなたが動かないからみんな見てるわよ」
「あぁ、うん。はーい」
私は重い腰を動かした。もっと考え事したかったのに……。
* * * * * *
しん、と静まり返った部屋。真ん中に、どんっとおっきいテーブルが一つ。どうやらここは王家の食堂らしい。十七人入っても窮屈じゃなく、逆に寂しいと思うほど大きい。
「では、自己紹介せよ。名、出身地、特技や好いている事などだ。アングリアナ嬢から」
ここでは、王妃様の偉そうな声さえ響かず、しんとした空気に吸収されてしまう。よくこんなとこでやってけるな、カラリウ。絶対、花嫁になりたくないからわざと失礼な言動をしようかな?
「わ、わ私は、マリヤ・アングリャーナです。出身地はエ、エラル村でで、と、と、特技は料理と裁縫です。よ、よろしくお願いします!」
マリヤが自己紹介してる。この流れで行くと次はあたし。失礼な言動を心掛けなくっちゃ。
「あたしはシャナ。出身地はマリヤと同じです。特技は数学と経済学、好きなことは音楽と読書。カラリウと趣味が合いそうで良かったです。よろしく」
あたしが少しばかり雑な自己紹介をすると、王妃様にじーっと見られた。あの観察するような眼、苦手だな。そんなことを思っていると次の人が話し始める。
ボーっと聞いている間に朝食は終わってしまった。なんか不味かった、と思いつつマリヤのほうを見ると、何やら考え事をしているようだった。
きょうは「つまらない」と思った。こんなことを思ったのは初めてだった。
これからは水曜or土、日をメインに更新していく予定です。