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5、リュイの面談

「し……つれいしますっ」


リュアは勇気を奮い立たせながら王子様のお部屋に入った。どーしよ、自信はあるけどすごーっく緊張する。


「どうぞ、リュイさん」


とてもきれいな天使の声が聞こえてくる。王子さまってホント素晴らしい!!

 王子様のお部屋の内装はとてもきれいだった。派手なわけではないけれど、地味なわけでもなく、上品な感じが漂っている。


「あの、私リュア……じゃなかった、リュイです。一度会ったことがあるんですけど、覚えてますか?」


間違えて、リュアって言っちゃった! やっぱり、緊張すると間違えるものなのかな?

 そんなことを考えながら王子様をよく眺める。


「僕は、カラリウだ。残念だけれど、ちょっと憶えてないなぁ。でもさ、君ってロクサ村の出身だよね? 僕、あそこに行ったことはないはずなんだ」


やっぱりか……。覚えてくれてたら嬉しいなーって思ってたけど、覚えてるはずないよね。でも、王子様のお名前が分かってよかった!


「カラリウってお名前なんですか? とっても綺麗ですね。名付け親はどなたですか?」

「……? ありがとう。名付け親は母上だよ。で、――」

「お母様なんですか。素晴らしいセンスをお持ちですね」


王子様の表情が何か微妙。母親のことを褒められて嬉しくないはずはないのに。嫌いなのかな。


「で、僕はロクサ村に行ったことないんだよ。いつかは行ってみたいんだけれど」

「そうなんですか? 本っ当に素晴らしい村ですよ。カラリウ様からしたらそうでもないかもしれませんが」

「いやいや、そんなことは無いよ。隣町のエノー村に幼いころ行ったけど、あれは素晴らしかったなあ」

「ありがとうございます」


本当の出身地、エノー村を褒められて思わず笑顔で礼を言ってしまった。あちゃー、まずかった?


「そこまでお礼を言わなくっても。第一、隣町でしょう?」

「え……、エノー村には従姉妹がいますから」


何とかごまかせたかなぁ? カラリウ様に嘘をつくのは後ろめたいし、反逆罪だけど。


「いけない! もう十分たってしまった。また今度、お話ししよう、リュア……じゃなかった、リュイさん」


一瞬、顔が火照った気がした。ばれた? ……ううん、ばれてないはず。今のは間違えただけ。そう自分に言い聞かせた。

*     *     *     *     *     *


「はあ……」


私--マリヤ--はあてがわれた部屋でため息をつく。豪華な調度品・内装・食事。何もかもが贅沢すぎる。昨日から落ち着かなくて仕方ない。一番豪華なのはカラリウ様だ。


「はぁあ……」


部屋のあちこちにある桜草の絵を見つめながら今日何度目かもわからないため息をついた。


*     *     *     *     *     *


「マーリヤー! いる?」

「いるわ。何?」


扉の奥から妹の声が聞こえたとたん、バンッと扉を乱暴に開けた。驚いているマリヤにあたしは笑いかける。


「あたし、妹だと思われた」

「誰に?」

「カラリウに」


あー、もう!! 笑いながら聞かないでよ。


「えっ、カラリウ様に?」

「うん。その前には笑われたし」

「なんて?」

「君と君のお姉さんは本当に双子か、だって。本っ当にひどいよね、カラリウ。まあ、友達にはなれそうだけどさ」

「良かったじゃない」


……全然良くない。

 それからあたしたちは夜が明けるまで仲良く話していた。

 その絆が切れる、第一歩を踏み出したのさえ気付かずに。

リュアと王子のちぐはぐすぎる会話にご注目。

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