19、訪問者
だいぶ空きましてすみません。
念のため前話まとめ:オスカルにシャナをけなされたマリヤが大激怒。
あたしたちはその足音に振り向いた。マリヤはまだ泣きそうな顔をしている。
「誰?」
「リュイだよぉー! マリヤ、大丈夫?」
え、リュア!? あたしもマリヤも二人して驚く。リュアって、こんな気遣いができるような子だったっけ。
「リュイ、何で来たの? 私のことなんて気にしなくても……」
「別にあなたを気にしている訳ではなくて、シャナが。それに教師としてあの言い方はありえなくてよ」
マリヤの問いにナシアが悠然と答える。この二人ってなんだか仲が悪いみたい。ピリピリしてて、マリヤらしくないな。
「そうですわよ。マリヤさんを傷つける方は許せませんし」
「この人たちも言ってる通りだよぉ! マリヤたちが傷ついてたらパパに怒られちゃうし」
リュアはおバカで自分しか見えてないし、メルも何考えてるのか分かんない。ナシアなんてマリヤを嫌ってるようにも見える。でも、……良い人たちだ。村の人とは比べ物にならないくらいに。元町長の変なおじいさんとは天と地ぐらいの差じゃないだろうか。
「ありがとう、みんな。私が突っ切って変なこと口走っちゃったばっかりに。いつもあんなこと言わないのだけど、本当にごめんなさい」
確かに、マリヤが暴言を吐くなんて珍しかったなぁ。いつもはきれいな言葉、相手を傷つけない言葉を使おうとしてるのに。
「でも、私でも言えなかったことをお口にできるなんて。少し見直しましたわ」
「そうですわよ、マリヤさんは素晴らしいです」
「だってさ、マリヤ。よかったね」
あたしの自慢の妹だもん、当たり前でしょ。心の中でならちょっと誇ってみてもいいよね。
あ、そういえばカラリウはどこいっちゃったんだろう?
「マリヤ。カラリウは来てないのかな?」
「……さぁ。お忙しいんでしょう、きっと」
静かに吐き出されたマリヤの言葉は悲しげだった。
* * * * *
あたしは力強く扉を叩く音で目を覚ました。
「うるさいなぁ、もう」
昨日の続きとしてまた励ましに来てくれたのかなぁ。みんな、心配激しいんだから。
結局昨日はずっと慰められっぱなしで部屋に帰ったんだし。
「誰?? ちょっと、眠いから静かにしてよー」
とりあえず玄関近くで叫んでみる。マリヤの姿を探しても、音に気付いた様子はないし姿も見えない。きっと奥のキッチンで朝ごはんでも作っているのだろう。
「失礼してもいい、です?」
扉の外から声が聞こえてくる。初めて耳にする甲高い女の子の声だ。
朝早くから、知らない人があたしたちに何の用事だろう。そう思いながらあたしは
「えーちょっと待って」
そんな間延びした声を上げた。