13、メルとお話し
メルの部屋についた。全体的に地味。だけど、壁に描かれた白い蘭がとっても綺麗!
「で、メル。話って何? 今度一緒に遊べるとか?」
「まさか。あなたと私が遊ぶだなんてこと、天と地がひっくり返ってもあり得ないことです」
メルは満面の笑みで言った。
やっぱりこの人、なんかとっつきにくいなぁ……。でも、面白いしゃべり方には興味がわく。ちょっと見直したかも。
「あなた、今、最も花嫁に近いわよね」
「そうだよ、それが何か?」
メルがなぜか顔をしかめた。え、あたしなんかした?
「あなた、稀代の天才、でしょう? どうしてこんなに無知なの。あの試練、本当はあなたの為の物だったんでしょう?」
あー、そういうことか。というか、ばれた!? ばれたなら……どうしよっかな?
あたしはしばらくの間考えた。
「うん、当たり。でも、なんで分かったの?」
「え?だって、メルちゃ……じゃなくて、私、未来透視ができるパニラの使い手だよ? このぐらいは見えなきゃ」
パニラって何だろう?
「それならさ、メル。パニラって何なのか教えてよ」
メルは一瞬悩んだ後、答えた。
「良いわよ」
「良いかしら? 私は一回しか説明しないわよ?」
メルがそう前置きした。桃色の瞳が剣呑に光っている。
「もちろん」
あたしがそういうと、メルはようやく説明し始めた。
「いいこと? パニラっていうのは機械の一種で正式名称を『未来透視の我がパニラ』と言うの。機械についてぐらいは知ってるでしょう?」
勿論知る訳無い。
「何それ?」
「はぁ……。機械っていうのは、素晴らしい未知なる力を持った道具よ。特別な鍛錬を受けた貴族だけが作れるのよ。とは言っても一人一つしか作れないのだけれども」
貴族が作るもの凄いものって事かぁ。
「ちょっと、ちゃんと聞いてるかしら?」
またメルににらまれた。メルの髪の毛、紫色で可愛いのに怖い表情のせいで台無し。もっと笑えばいいの
に。ナシアと一緒にいるときもずっと無表情だし。
「分かったならパニラの説明に入るわ。このパニラは未来を見たり透視をしたりできるのよ。ただし、一日一回のみ。使えるのは使い手である私だけ、という制限付きだけれども」
わぁ、メルすごいじゃん。友達になれてよかった!
……そういえば。
「パニラって『ノリダルの冒険』に出てくるマスアートっていうのにそっくり!」
「私もそう思ったのよ」
『ノリダルの冒険』って結構みんな知らない本なんだけどな。
「メルって本好きなの?」
「ええ、そうよ」
メルの桃色の目って可愛いなぁ。そんなことをあの二人以外に思ったのは初めてかも。