第12話 人体実験
蘭鋳が悪魔と言われても日常に変化はなく仕事もまたいつも通りだった。
午前中は蘭鋳と勉強をし、午後からは業務に取り掛かる。
しかし、学校に行ったことのない蘭鋳のはずなのに学力高すぎやしないだろうか?
頭がいいのは認めるけどこの生活始めて1年と聞いているのに国語と英語以外は中学卒業レベルぐらいには到達しているような気がする。
読み書きは問題ないが文法などで怪しい国語、単語の知識はあるがやっぱり文法怪しくて文章にならない英語。
この2つさえなんとか出来れば市内の高校なら受かるだろう。
やっぱり蓮見さんが教えたんだろうか?
そんなことをぼんやりと考えながら仕事をしていると部屋から蓮見さんが出てきた。
「真咲、ちょっとこの手袋嵌めてみてくれる?」
なんてことのない黒い革製のグローブ。
だが蓮見さんが仕事場から持ち出してきた時点で怪しさ大爆発だ。
「……何の実験ですか?」
慎重に訊く。
「市販の手袋を色々改造したから使い勝手を知りたいだけよ。そんなに怪しい物じゃないわ。うふふ」
笑ってる時点で怪しいのだがそこまで言われては嵌めないわけにもいかないだろう。
「わかりました。でも呪われてるとかならお断りしますよ」
「呪われてもいないし危険もないわ」
よし、嵌めよう。見た目と違って随分柔らかい。嵌めてもそんな感じがしないほど着け心地がいい。
これは普通にいい物なんじゃないだろうか?
「普通にいい物って感じですね。結局どんな改造したんですか?」
「燃えない、濡れない、感電しない、という改造だから火にあてて熱いか試したり水につけて浸透しないか試したり電気流して感電しないか試してみて欲しいのよ。うふふ」
危険はないって言ったじゃないか!
「謹んでお返し致します」
「実験に成功したらあげようと思ったのにつれないわね」
蓮見印の手袋、お値段は如何程になるのやら。
「ちなみに自信の程は?」
「その程度の改造で失敗してたら仕事が成り立たないわね。勿論100%成功を信じてるわ」
押しに弱い僕なので試すことになった。
まず普通に燃えないし熱くもない。
水は通さないし冷たさも通さない。
どこから出てきたのかわからないスタンガンで電気を流したわけだけど当たり前のように感電しなかった。
「あと基本的には斬れないし銃弾も貫通しないわよ。駆除士がよく使う手袋の応用編ってとこかしら」
「普通の生活する上での利点を教えてください」
「保温力が高くて通気性もいいわよ。耐電仕様だから静電気対策にもいいわね」
今は初夏だというのに保温してどうするんだろうか。静電気も冬のイメージがある。
「まぁ悪いものじゃないですし頂いておきます。売ったらいくらになるんでしょうね?」
「80万ぐらいかしら。大事に使いなさい。うふふ」
そう言い残してまた部屋へと戻っていった。
突然どうしたんだろう?突発的に作りたくなっただけだろうか。
「所長は思いつきで作ったりするからねー」
僕の困惑顔を見てなのか蘭鋳が注釈を入れてくれる。
「蘭鋳も何かもらったことあるの?」
「あるよー。このクマのぬいぐるみー」
どこかで見たようなデザインのぬいぐるみだ。特に変わったところはなさそうだが。
「どんな改造されてるの?」
「これは普通に呪われてて変なモノに好かれやすくなるんだってさー」
変なモノ=僕、ということだろうか。確かに普通ではないのかもしれないが……。
「部屋のトーテムポールあるじゃないー?アレ80%はアタシのこと見てるんだよねー」
確かに変なモノに好かれてる!
そこに意味があるのかすごく問いたいところだけど。
「幽霊とかも寄ってくるからそういう仕事のときは便利だよー」
なるほど、仕事用ってことか。となると僕の手袋も何か意味があるんじゃないだろうか?
相手は『未来が視える』人なわけだし。今後の生活で活用する場面が出てくるのかもしれない。
「まぁほとんどの物は思いついたから作っただけらしいけどねー」
「思いつきで呪われた品物作るってどうなんだろう……」
「あのトーテムポールも作品らしいけど意味とか感じられないよねー。あはは」
確かに。視線が来るという不気味な置物に意味は感じられない。
それでも、これは僕の勘だがきっとこの手袋は僕の役に立つような気がする。
今じゃなくてもっと先のことだろうけど。
物騒な事は御免なのだが……




