第10話 異能説明
死にたくなったら結界を突破できる超能力!
はっきり言っていらない。というか使いどころがわからない。
一般的な生活する上で結界なんてものにぶちあたることはそうそうないだろう。
むしろ入ってはいけない場所なのだからぶちあたったほうがいい。
その上発動条件が死にたくなったとき。
神様は僕に何を求めているのでしょう?
「なんとも言えない異能ですけれど異能は異能。自身を誇ってもよろしいんじゃなくて?」
がっくりしている僕にフォローの言葉をかけてくれる菫さん。
意外にこの人優しいんじゃないだろうか?
「ところで異能って超能力と同義語でいいんですかね?」
すごくどうでもいいが気になったので聞いてみる。
「そうね。もっと広い意味になるのだけど認識としてはそれでいいんじゃないかしら」
昔憧れていた超能力はこんなんじゃなかったのになぁ……
「何故落ち込んでいるのかわからないけれど修行すればもっとはっきりした形の異能になるわよ?」
「はっきりした形?」
オウム返しに訊く。
「結界を突破できるなんて限定的なものではなくて『何でも突破できる』能力になったりするわね」
それこそ僕の求めていた超能力だ!
「修行って言っても真咲は素人も素人、殴り合いの経験すら怪しい感じだよー?」
蘭鋳が僕の解説をしてくれる。
うん、殴り合いの経験もない。
「修行と言っても色々ありますわ。術師が行うような、例えば座禅とかでもよろしくってよ」
座禅で超能力鍛えれるのか。この世界は奥が深すぎて僕にはついていくのが困難だ。
「そうだ!貴方うちで働かないかしら?ここほど給料出せるかはわかりませんけど、異能の取り扱いについて完璧にレクチャーしてあげましてよ!」
引き抜きにあってる、この僕が。人生的にすごいことなんじゃないだろうか。けど……
「この研究所にはお世話になってるし気に入ってるのでその話は受けれません」
きっぱりと断る。
別に異能なんて欲しくて身に付いたものじゃないし。
「そう……でも私はあきらめませんわよ!優秀な所員まで蓮見さんについたら……」
やっぱり引き抜き工作だったのか。
まぁとりあえず断ったし問題ないだろう。
「今日のところはこれで帰ります。次はうん、と言わせますからね!」
台風のような人だ。でも足音は相変わらずすたすたと可愛い。
「あんまり頻繁に来ないでねー。めんどくさいからー」
蘭鋳が本音でものを言っている。菫さんはその程度じゃ折れないだろうが。
「ふぅ。なんかどたばたしたね。お茶淹れようか?」
少し落ち着きたい。
「飲むー」
キッチンに行って2人分のお茶を淹れて戻ってくる。
「それにしても異能ってそんなに珍しいものなの?」
「業界でもひと握りの人間しか異能はないって所長が言ってたよー」
それが例えどんなものであろうと重宝されるってわけか。
「真咲は異能使えるようになりたくないのー?」
「使えるなら使えたほうがいいけど僕のは欠陥だらけっぽいしね」
これが完成形ではないにしても始めが酷すぎる。
「所長が週末に色々試すって言ってたからなんとかなると思うよー」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたっけ。さっき菫さんが試したからなぁ」
これ以上何を試すというのだろう。
蓮見さんのことだから何をするか想像もつかない。
「所長も異能持ちだからねー」
「え、そうなの?どんな異能?」
「未来が見える、念動力の2つかなー。念動力は使ってるのみたことないけどー」
「1人で2つとか有り得るんだ」
「所長の知り合いで3つ持ってる人もいるって言ってたなー」
最早人間兵器なんじゃないだろうか。
忘れてたけど仕事再開しないとまずい気がする。
「蘭鋳!仕事のこと忘れてた!電話線繋ぐから!」
ちょっと慌てて仕事を再開する。
それにしても異能か。
どんな形になるのかわからないけれど少し胸を躍らせるものがあった。




