図書室
方等学園の南館にある図書室。
元々は百年以上前に建てられたものだが、幾重にも渡る改装工事のため、中は至って現代的に纏められている。
一般の大学図書館にも等しく、何列にも及ぶ本棚と机が佇み、自習机はもちろん、ビデオスペースすら設けられていた。
利用性の高さから放課後利用する生徒も少なからずおり、それは今日も変わらない様だ。
室内には、十数名の生徒。
一人一人が落ち着いた雰囲気を作り出し、彼ら個人としても図書室の一部にふさわしい光景となっている。
そんな中――カウンターの内側で隣合って座る男女が一組。
対応用と事務用の二段構成となっているカウンターの下段。
周囲からは見えにくい造りとなっているそこで、役人の様にテキパキと業務をこなしている。
否。放課後の委員が二人だけでする業務などない。彼らがしていたのはメモを使った会話。
委員用に用意されているメモ用紙を惜し気もなく、静かに千切る。文字を連ねてから、相手が見える場所スライドさせる。
――その往復。
どうしても何かを話したい時、彼らはこの方法を使った。
口頭では声、携帯では校則が邪魔になり、その条件下で考え付いた最善策で、後には外見的に安全という理由もついた。
少年のメモが少女の目の前にスライドされた。
「……神隠し?」
「そうです、神隠し。知っていますか、王手さん?」