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大切に育てた子供達は大陸を滅ぼしかねない存在でした 〜最強の魔族が支えるスローライフ〜  作者: 達磨 紺紺


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魔族という存在

「っっ!」


 その声を聞いた時、ソフィアの顔が固まった。尚も続く二人の男同士の会話は、過激な表現を増していく。


「なんでも、魔王軍の占領が今までで一番進んでるそうだ。連合軍は壊滅的。勇者がいてようやく持ち堪えてんだとよ」


「何やってんだよ!? 情けねえ! 数じゃ人間の方が多いんだろ!?」


「全くだ。とっとと皆殺しにしちまえよ、魔族なんか」


 劣悪な感情を吐き出すだけの会話。だが、それを咎める人間はいない。


 人間にとって魔族とは、どれだけ汚い言葉を使っても表現できない、最悪の存在だということが共通認識だからだ。



 この世界の土地は、大きく分けて二つに分けられる。人間が住む『人間界』。そして、人間以外の人種の総称として、"魔族"と呼ばれる種族が住む『魔界』だ。

 とはいえ、つい百年ほど前まで魔界は存在せず、人は自分達の世界を人間界などと呼ぶこともなかった。


 魔族自体は遥か昔から存在していたが、その数は人間に比べて圧倒的に少なく、大きな天敵のいない人間の社会は、際限なく栄えていった。


 だが、そんな人間第一の世界も、《魔王》と呼ばれる魔族が世界の北側を支配してから全てが変わる。


 元々、単体での戦闘能力は人間を凌駕する魔族が軍となり、人が支配していた領土を瞬く間に蹂躙していった。


 それから百年。人間と魔族の戦いは、今でもその激しさを損なう事なく続いている。


 つまり、今の人間からしてみれば、生まれた時から魔族は人を殺す怪物でしかないということだ。

 小さい頃からそう教育されたし、事実人間が最も死ぬ理由は病気や事故よりも戦死が多い。人間の天敵であり、知能を持った侵略者達。ほとんどの人が、魔族という存在に対して憎悪を抱いているのも分からなくはない。



 だからといって



「ソフィア」



 こいつが、こんな悲しそうな顔をする理由にはならない。



「大丈夫。お前は何も悪くないよ」


「………う、うん」


 尚も影のある表情を崩さないソフィアに、胸が締め付けられるような気持ちになる。あいつらが言ってるのは、人を殺してる魔族の話だ。今まで平和に暮らしてきたソフィア達には何の関係もないと断言できる。


 それでも、魔族は生きてる事が罪なのだと、人間社会の常識としてあるのは事実だった。俺の考えの方が、人間の中では異常なんだろう。



 けど、そんな事は分かった上で、俺はこいつらを育てると決めたんだろうが。



「あっ! 飴串あるじゃん。一つ買ってやるよ」


「へ? いつもはダメって」


「そーだなー。あいつらには内緒だぞ?」


 魔族だとしても、俺はこいつらには笑っていてほしい。お前達の生き方は、何一つ間違ってなんかないといくらでも言ってやる。


 店頭に並んでるソフィアの大好物を買ってやると、確認するように俺の顔に視線が向いた。

 大丈夫だと伝えるために笑ってやれば、花開いたような笑顔に変わったソフィアが飴に舌を這わせる。


「んん〜〜っ! 美味しいのだし!」


 先程までとは違い、心底幸せそうな表情のソフィアに、ようやく胸が軽くなる。やっぱり、この笑顔が間違ってるだなんて俺には思えない。


 いつか、人間社会に出た時、こいつらが人と同じように、平穏に過ごせるように育ってほしい。


(それまでは、俺が絶対に――)



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