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大切に育てた子供達は大陸を滅ぼしかねない存在でした 〜最強の魔族が支えるスローライフ〜  作者: 達磨 紺紺


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不安の正体

「………………なあ、何怒ってんだよ?」


 アドウィンさん達の店から離れ、大通りにあるパン屋で目当ての物を買った後、目の前を歩くソフィアは、一度も俺と顔を合わせようとはしない。

 目の前に顔を持っていっても、膨れっ面を横に上にとブンブン振り回し、意地でも怒ってますアピールを続けた。


「パンは何買ってく? 最近ジャムが入ったのハクが気に入ってたろ。みんなは何がいいかな?」


「フン!」


「あとは、最近少なくなった調味料も買わないと。偶には使った事ないスパイスとかも試してみたいよなぁ」


「フン!」


「お? あれってソフィアの好きな果物じゃなかったっけ? 買ってく?」


「っっ! ………フ、フン!」


 揺らいだな。


 ただ、その後も気にせず質問を投げるが、頑なな態度は軟化することなく、意地でも無視してやろうという強固な意志を感じた。

これで放置すれば後が面倒になる事は、嫌というほど経験している。


「なぁー、ほんとにどうしたんだよ? 言ってくれないと分かんないぞ?」


「フンだ! ちょっとは自分で考えたらいいのだし!」


「俺が結婚したら、孤児院から出て行くかもしれないと思って焦った?」


「!??」


 核心を突いてやると、今までずっと逸らし続けていたソフィアの顔が、首がもげるんじゃないかというくらいの速さでこちらに向く。その表情は、この上ないほど分かりやすく驚愕を示していた。


「………な、なんで」


「バカ。何年一緒にいると思ってんだよ。最初から分かってたわ」


「は、はあ!? か、揶揄(からか)ったのだし!?」


 目を見開きながらそう反応したソフィアが詰め寄ってくる。


「お前が無視するからだろーが。反抗期か?」


「そ、そんなんじゃないもん! ………ちょっと、心配になったんだし」


 途端に、勢いを無くしたソフィアの顔が俯く。


 泣きそうなほどに悲壮感を漂わせるソフィアは、いつもの構ってほしい時の反応とは少し違う。これはきっと、本気で心配してる顔だ。


「……ユーゴは………その…………本物の家族が出来たら、そっち優先する?」


 普段の家で見る姿とは違う、あまりにも弱々しい声。ただ、それは見当違いもいいところだ。


「何言ってんだ。家族に偽物もクソもないだろ。お前らは俺の家族だよ」


「で、でも………ユーゴちょっと悩んでたでしょ? 本当は、人間の家族が欲しいんじゃ………」


「そりゃ、あんな人に結婚持ちかけられたらびっくりするけど、別に迷ってなんかないって。少なくとも、お前らが全員独り立ちできるようになってからじゃないとなぁ」


 そう断言するが、ソフィアはまだ不安そうにこちらを見上げてくる。

 俺にとって一番の優先順位は、あの孤児院にいる子供達だ。これは何があっても変わらない。最古参のアルフに至っては、親代わりになってもう八年経つのだ。それでなくても、今みたいに金に余裕がない時でも、俺のことを信じてついてきてくれたこいつらに、情が湧かない訳はないだろう。


 尚も俯くソフィアに、俺は親心と、少しのいたずら心が湧いた。


「大丈夫だし。例え婚姻の契りを交わそうと、我の聖域はもう決まっているのだからな!」


「!?」


 左眼に手を添えてそう言えば、ソフィアの顔は瞬く間に真っ赤に染まった。羞恥からなったそれは、徐々にその赤を濃くしながら怒りの形相へと変わる。


「ユ、ユーゴぉ!!」


「ぶっはははははははは!」


 思わず吹き出して、大通りの真ん中で腹を抱えて笑った。通行人が何事かと数人振り向き、ただのじゃれあいであると理解した者から視線を外す。


 そりゃそうだ。こんなのは当たり前にある、何の不自然もない人の生活の一部だ。ソフィアだって、見た目も行動も、何一つおかしなところなんでない。


「おい、聞いたか? 連合国軍が、また魔族の奴らにやられたってよ!」


「またかよ! 魔族のクソ共が。いい加減全員死ねばいいのによぉ」



 だから、そんな話は関係ないはずなんだ。


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