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大切に育てた子供達は大陸を滅ぼしかねない存在でした 〜最強の魔族が支えるスローライフ〜  作者: 達磨 紺紺


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ハクリエル

「くっ! この化け物め!」


 人間から向けられる、悍ましい感情。この姿の時に向けられるのは久しぶりだな。


 だからだろうか。いつの間にか、我は自身を人間だと思い始めていたのかもしれない。


(……なんてことを言ったら、ユーゴは喜びそうだな)


 口元が弧に歪むのを感じる。


 仮面は好きだ。無意識の笑みを見られることはなく、どんな顔をしたところで我の気持ちを誰にも悟られることはない。


「おおおおおおお!!」


 物思いに耽っていると、横から剣に炎を纏わせた男が斬りかかってきた。振り下ろす際、その炎が大きくなり、魔力の波動を肌で感じる。


 だが、


甲鱗(こうりん)


 甲高い音と共に、振り下ろされた剣が私に届く前に止まる。


「なっ!?」


 男の驚愕に染まった声が響き、その視線が私の、竜の鱗に守られた腕に向けられた。


「何を驚く。我を化け物と叫んだ貴様らが」


「こ、こんな――ごふう!!」


 呆れた声を上げ、もう片方の腕にも鎧を纏わせた我は、それを剣士の腹に叩きつけた。ただ、十分に加減したはずの殴打に、剣士は血を吐きながら思いの外遠くまで吹っ飛ぶ。


「………………」


 力加減を間違えたかもしれん。リリスにあんなことを言っておいて、ここで我が人間を殺したら面目が立たん。


 少しの心配からその剣士を見つめていれば、苦悶に満ちながらもその表情が変わるのを見て、少し安堵する。


「くそっ! 囲め! 囲めぇ!」


 隊長らしき奴が声を張り、それに連動して周りの人間が我を中心に円を描くように取り囲む。

 全員が、歩数にして五、六歩と言った場所に陣取ったのを見て、我は一つ息を吐いた。


 人間相手であれば、この距離は適切なのだろう。だが、


「随分と狭いな。竜人にとって、この程度の距離はないと同じだ!」


 体内で押さえつけていた衝動。それを解放し、視界が急速に昇っていく。


 魔族は、それぞれ見た目の特性が違う。淫魔には羽と尻尾があり、鬼にはツノが生えていて、エルフは耳が長く、妖狐は頭の上にも耳がある。


 生まれた時から人間と変わらないのは悪魔だけだ。それでも、他の魔族も成長するにつれ、自身の体を人間のように見せることができるようになる。



 そして、他の主な魔族とは違い、竜人はそもそも2つの姿を持っていた。



 1つは、悪魔や人間と同じような姿。



 もう一つは――



「こっ、これは………」


 人間共が我を見上げ、絶望に彩られた顔をする。それを見下ろしながら、我は長くなった首を持ち上げて戦場を見渡した。


 鉄を越える強度の鱗が全身に広がり、それに纏われた尻尾は一振りで人間の胴など容易く両断する凶器となる。背中に生えた羽を少し動かすだけで、地上の人間共は立っていることもままならず吹き飛ばされた。



 竜人のもう一つの姿とは、人間がドラゴンと呼ぶ存在と同じものだ。



 時に崇められ、時に畏れられ、時に蹂躙する暴力の化身。


「………ひ、怯むな! 攻撃を開始しろ!」


 先ほどの隊長らしき男の号令が響く。だが、それが戦場を揺らすことはなかった。

 我が人間の姿だった時とは違い、今の人間共は明らかに繊維を喪失している。それも、仕方がないといえばそうなのだろう。


 人間と竜では、生まれ持った全てが違う。蟻から見た人間が絶対的な強者であるように、人間が竜に抗うなど自殺と変わらない。


(………今の我なら、あんなことも起こらなかったのだろうか)


 戦場の只中で、ふと、そんな感慨が頭を過ぎる。


 忌まわしき奴等の、最悪な追憶が。


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