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大切に育てた子供達は大陸を滅ぼしかねない存在でした 〜最強の魔族が支えるスローライフ〜  作者: 達磨 紺紺


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リリス


「もぉ〜〜! 今日はユーゴの看病してあげたかったのにぃ〜〜」


 目の前で攻撃魔法を唱えるゴミク………人間共に向けて、私は思いっきり不満をぶちまける。

 ユーゴが何年か振りの二日酔いだと聞いて、何もできなかった頃から私がどれだけ成長したのかを見てもらいたかったのに、このがいちゅ………人間共は本当にタイミングが悪い。


「第一陣、放て!」


 少し偉そうな奴がそう指揮した次の瞬間、後ろにいる奴らから一斉に魔法が放たれた。全部が炎魔法で、火球が正確に私達に降り注ぐ中、


「そんなトロイ魔法が当たるわけなくない?」


 背中から黒い羽を伸ばし、その場から宙に身を投げる。降り注ぐ魔法の全てを避けて、私はカスど………人間共の上で魔力を解放した。


「魅了の魔法」


 瞳に魔力を込め、私に向けられる視線の全てに向けてそれをばら撒く。


「ぐっ!?」


 魔力を受けた奴から膝をつき、体中から力が抜けていってるのが分かる。ただ、一番の変化は、物理的な傷をつけたわけじゃないのにその目から戦意が消えていくことだ。


「ぐああっ!? な、ら、………うぁ……………」


 一人、また一人と意識を失い、夢の世界へと旅立つのを確認しながら、私は地面に降り立った。目の前には、私の魔法の効果範囲から免れたにくか…………人間共が、私に敵意と恐怖が入り混じった不快な視線を向けてきた。


「き、貴様! そいつらに何をした!?」


「えー? 気になるならぁ、自分の目で確認したら?」


 私がそう返したのを挑発と捉えたのか、おぶ………人間共は瞳に宿す感情に怒りの度合いを強める。


 だけど、私が言ったことを、こいつらはすぐに実行することになった。


「っっ!? なっ、はあ!?」


 戸惑いの声が上がった。だけどそれは、私を見ている奴ではなく、私の背後を見つめていた奴の声だ。


 たった今倒れた兵士たちが、私の後ろでゾンビみたいに起き上がり、私を守るように前に出たから。


「さぁーて、潰し合え!」


 私の言葉を合図に、ゾンビ人間共は前進し、つい今さっきまで仲間だった同胞に襲いかかった。


「なっ!? よ、よせ! 何をしているんだ!!」


「う、うあ、うあうあうあああ!!」


 鍔迫り合いの音と共に、説得の言葉が戦場に響く。けど、その声に応えたのは、正気を感じさせない言葉とも言えない呻き声。


 阿鼻叫喚がその場に響き渡るのを、私はゾンビ人間の後ろから眺めていた。


 魅了の魔法は、相手に私への服従を強制するようなもの。所謂、洗脳とかと同じものだ。


 これに抗えるのは、同族のサキュバスか、私より魔力の多い相手しかいない。


「あっ、兄貴! やめろよ! 正気に戻ってくれ!!」


 その時、一層悲痛な声を上げた男が目に留まる。


 ゾンビ人間になった奴とそうじゃない奴。だけど、よく似た顔立ちの二人が、地面に倒れて取っ組み合いをしていた。

 殺さないように力をセーブしているからか、ゾンビ人間の方が抑え込まれている。その上から必死に説得をしているのは、状況的にそいつの弟なのだろう。


「なあ! 兄貴! 兄貴ぃ!!」


「うあああ、うあう………」


 そうやって話しかければ、愛の力かなんかで正気に戻るとでも思っているのだろうか。

 ただのバカなのか、現実を直視できていないのか、はたまた僅かな可能性に縋る事しかできない弱者なのか。私を舐めている可能性もある。


 まあ、その全部が当てはまるんだろうな。


「無駄だよー。そうなったら、もう私の言う事を聞くしか脳がない操り人形みたいなものだから」


「っっ!? お、お前はっ!?」


 あまりにも無様で、見ていられないほどの醜態に、思わずそいつの元へと歩く。私の存在に気がついた男は、怒りに身を震わせて私を睨みつけた。


「お、お前の魔法か! 俺の兄貴に何をしやがった!?」


「見ての通りだよ。私の敵を排除しようとしてくれるようにお願いしただけで、こんなに献身的になってくれてるんだから、私って罪な女だよね」


 おどけてそう話す私だけど、仮面の下の口元は欠片も笑みを作れていない。

 血の繋がった家族の姿は、私にとって最も残酷な記憶を掘り起こさせたから。


「くそっ! ふざけるな! こんな事をして、やはり貴様らには心がないのか!!」


「――――――――」



 だからだろうか。人間にそう言われた時、私の中で何かが切れた。



 それは理性だったのか、良心だったのか、その両方か。



 何を言ってるんだ? こいつは



「……………ずいぶん、調子のいいこと言うじゃん。先に手を出したのは、お前らの方だろ!!」


 血を吐くかのように、私は胸に宿す感情を吐き出す。



 忘れない。忘れられるわけがない。



 人間にされたことを、私は何一つ忘れられない。今だって、ただ安心して暮らしたいだけなのに、誰にも迷惑かけてないのに、こいつらは私たちの生活を壊そうと攻めてきた。


 そんな立場で、よくもそんな――


「リリス」


 その時、誰かが私の肩に手を置いて、後ろから声を掛けてきた。頭に血が登っていた私は、それが一瞬誰だか分からなくて、感情任せに振り返ると――


「………ハク」


「その辺でやめておけ。我を諭したお前が、そんな調子でどうする」


「――――あ」


 目の前を見ると、いつの間にか兄弟の立ち位置が変わっていた。


 組み敷かれていたゾンビ人間の方が、今度は人間に乗り掛かり、その首に手をかけて殺そうとしているところを視界にいれる。


 無意識に、ゾンビ人間に流す魔力を強めていたのだと、その時に気がついた。


 泡を吹き、実の兄に手を掛けられそうになっている男を、私は温度のない眼で見つめる。


「…………」


 どうしても、その人間の命に、私は価値を見出せなかった。


 きっと、ここでこいつを殺したとしても、私は同情なんてしない。こうなったのは攻めてきたこいつのせいだし、自業自得だ。


 だけど――



『今は許せなくてもいい。けど、お前らには、人間と共存してほしいと思ってるよ』



「………ユーゴ」



 凍りついた心が、その存在を想うだけでまた熱を持つ。



「………リリス」


「分かってるよ、ハク。もう大丈夫」


 心配そうに声をかけるハクに手を上げて応える。目の前で兄に殺されそうになっていた男を解放すると、とっくに気を失っていたのかそれ以上男が反応することはなかった。



 人間への憎悪は消えていない。だけど、それでも私は、ユーゴと一緒にいたい。



 胸を張って、一緒にいれる自分になりたい。



 そう、あの時に誓ったんだ。


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