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陰陽師盲愛奇譚  作者: 彩月野生
一章【鬼神に取り憑かれし者】
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第十一話〈思わぬ申し出〉


 気を失って倒れた泰正に、三人は駆け寄ると、英心が彼の脈を確認した。

 二人に「休ませよう」と声をかけて、英心は泰正を背負って運び出す。


 貴族達は泰正に奇異の目を向けて、ひそひそとささやく。

 英心は、帝に目を向けて、心臓が跳ねた。


 鋭い目つきには、明らかな嫌悪感が浮かんでいたのだ。


 英心は、泰正を天照と佐々斬に預け、帝に向かって頭を垂れて歩みよった。



 泰正は己が子供の姿であり、陰陽師の卵達が師に教えを仰ぎ、懸命に式神を使役する練習をしているのを見ていた。

 そんな子供達の中でも一番目立つのは、英心であった。


 彼は、泰正と同年齢で幼なじみなのだが、九歳のこの頃はすでに、安倍晴明と並ぶ才能を持つ、神童だと言われていた。


 泰正は、師から“能無し”と見られていた為、主に両親と書物から知識を得ては修練に励んでいた。

 英心と己との能力の差は、毎日のように開いていく。その差を目の前で見せつけられて、毎日両親に泣きつく始末であった。

 両親は、泰正には力があると励ましてくれたが、どうしても英心に勝ちたいという気持ちに執着してしまい、ある鬼神について書物で知り、鬼神が封印された岩を見つけ出したのだ……。


「……ん」

「泰正様、意識が!」

「千景か……」


 ――どうやら夢を見ていたようだ。


 布団に寝かされていた泰正は、狩衣の格好のままであり、いったい己がどうしたのかが思い出せない。


 軽く頭痛もしており、上半身を起こすと顔を振る。

 千景に白湯を手渡され、喉を潤してから状況を訊ねた。


「泰正様は、舞の後に倒れたんです」

「……そうだったのか」

「覚えていらっしゃらないのですか」


 本堂の傍に仮設された休所に寝かされていた泰正は、記憶をなぞり舞の時の光景が脳裏に蘇る。


「ああ……そうだ、私は……」

「失礼します」

「!」


 戸の先から声をかけられ、泰正は千景が戸に近づくのを見つめ、返事を返した。


「その声は、英心か」

「はい。お話がございます」

「……」


 やけにかしこまった言葉遣いに違和感を覚えて、泰正は千景に目をやり、頷く。

 千景はそっと戸を開き、英心を招き入れて泰正の傍まで下がった。


 英心はお辞儀をして少し前に進み出ると、おもむろに口を開いて、泰正の目を見据えて話しかける。


「暫しの間、貴方を監視させて頂く」

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